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ゲーム作りに関するあれこれ

ゲーム開発に使える心理学【オペランド条件づけ】

ゲーム開発に使える心理学としてオペランド条件づけがある

オペランド条件づけとは?

オペランド条件づけとは、ある刺激を受け取った結果として、自発的にある行動を取るように学習することである。

スキナー箱実験

1938年にバラス・スキナーが行った実験。まずラットをレバーのある箱の中に閉じ込める。ラットが偶然レバーに触れると餌が出てきて、美味しい思いをしたラット何度もレバーを操作しようと同じ行動を繰り返すようになる。これは餌という良い思い(好子)を得ることで行動の回数が増えた結果(強化)である。この場合餌は任意の行動を促すもの(強化子)である。

スキナー箱実験は様々なパターンが有り、ラットの他にも鳩を使って再現を確かめるものもある。

また、今回のように特定の行動を誘発させる(強化)の他にも、特定の行動を抑えるものも存在する(弱化)。例えばピーマンを食べて苦くてつらい思いをした子供はその苦さ(嫌子)を避けるためにピーマンを食べようとしないなどである。

 

大別すると以下の4つがある

正の強化

行動をしたら良いことが起きた -> ので行動が増える

負の強化 

行動をしたら悪いことが起きなくなった -> ので行動が増える

正の弱化

行動をしたら、良くない結果が出た-> ので行動が減る

負の弱化

行動をしたら良い結果がなくなった -> ので行動が減る

ゲームにおけるオペランド条件づけ

ゲームはオペランド条件づけの塊である、何かの行動を起こせば何かしらの反応が返ってくるため、それらの反応をよいものと感じるか、悪いものであると感じるかでユーザーの行動は増える(強化)か減る(弱化)か分かれる。

ゲームに出てくるオペランド条件付の要素の例

スティックを倒したら行きたい方向にキャラクターを移動させることができた(正の強化)

レアアイテムを使用したことでアイテムの残量が減ってしまった(負の弱化)

毒沼に踏み込んだらキャラクターがダメージを受けてしまった(正の弱化)

毒沼から抜け出したらキャラクターがダメージを受けなくなった(負の強化)

ゲームに活用できるオペランド条件づけ

正の強化

特定の課題を解決することによって、ゲーム内で利用できるようなアイテムを獲得できたり、新しい実績を解除したりすることができる。プレイヤーはこのことを嬉しく思い、課題への挑戦と解決を繰り返す

負の強化

ダメージを受けて瀕死になっているときに、回復アイテムを利用して、瀕死の状態から回復できる。プレイヤーはダメージを受けたら回復アイテムをよく利用するようになる。

正の弱化

ステージ内に触れるとダメージを受ける罠が存在しており、それによってダメージを受けたとする、それを体験したユーザーはダメージ受けることを回避するために罠に近寄ることが少なくなる。

負の弱化

報酬がたくさんもらえるが入るために高価なアイテムが必要なステージがある、高価なアイテムの消失を避けるために、プレイヤーは積極的にステージに入るモチベーションがすくなくなる

オペランド条件づけをゲームから学習する方法

自分がゲーム内で何かしらの行動を行ったときに、振り返って、なぜその行動を行ったのかを考えると良いだろう。例えばレアアイテムが欲しかった場合、なぜそのレアアイテムを欲しがったのか、そのアイテムを利用するとどのような嬉しいことが起きるのか、を考える。特別ポジティブな行動ではなくても何故その行動を取ってしまったのかを常に意識しながらゲームをプレイするとよいだろう。

 

まとめ

ゲーム開発において、オペランド条件づけを適切に活用することによって、プレイヤーの行動を効果的に誘導し、より魅力的で楽しめるゲーム体験を提供することができる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲーム開発に使える心理学【双曲割引】

ゲームに使える心理学として、双曲割引がある

 

双曲割引とは

同じような報酬であれば、獲得できるタイミングが早いほうが価値を高く、遅いほうがそれを低く感じるという概念。

仮に遅く貰える報酬のほうが、価値が高いと分かっていてもより早くもらえる小さな報酬のほうが優先して選択されるような経済学的に非合理的な行動にもつながる。

 

日常における双曲曲線の例

ダイエットがわかりやすい。眼の前にあるケーキという、近く小さな報酬の前には、ダイエット成功でスリムな体、という遠く大きな報酬が霞んでしまい、結局ケーキを食べることになってしまう。試験前に漫画を読んでしまったり、貯金したいのについ使いすぎたりしてしまう心理もこの概念で説明することができる。

 

ゲームにおける双曲曲線の例

ゲームではチュートリアルに双曲曲線が活用されているだろう。いきなり時間をかけて、大量の経験値を稼がせて報酬を与えるよりも、ちょっと進めればすぐにレベルアップする仕様のほうが、ユーザーがモチベーションを高くプレイしてくれることが想定される。そもそもチュートリアルの目的はユーザーにゲームのプレイ方法を覚えてもらうためである。プレイそのものに歯ごたえをもたせるよりも、眼前の報酬をサクサク取っていったらいつの間にかプレイ方法を理解していた、のような流れになる方が良いと考える。

ゲーム開発における双曲曲線の活用方法

ゲーム開発において双曲曲線を活用するために、細かなマイルストーンが挙げられる。ユーザーは小さくともすぐ手に入る報酬により価値を感じる性質をもっている。つまりマイルストーンを細かく分割してあとちょっとプレイすれば報酬が手に入ることをユーザーに知らせれば、ユーザーはひとまずそこまで、という感覚でプレイを続けてくれる。例えば敵の撃破数を例に出すと、序盤から100体撃破を最初の達成項目にするよりも、最初は1体撃破、5体撃破、10体撃破と刻んでいったほうがユーザーが報酬を獲得できるタイミングを増やすことができ、ユーザーが途中で離脱するリスクを軽減することができる。そして重要なのは報酬を与える、という現象であり、その報酬そのものの価値とはあまり相関がないと考えられることだ。もっと言ってしまえば、具体的にはゲーム資産を与えずもただの称号のアンロックだけでも効果はあると考える。例えばスライムを倒すだけでは、もらえる経験値もお金もごく僅かだが、最初の一匹を倒したタイミングで、【初めての討伐】や【冒険者への第一歩】などの称号が貰えればユーザー体験も変わってくるだろう。

広告でもよく見る、インストールだけでガチャ〇〇連などもこの双曲曲線のすぐ手に入る報酬、という部分をアピールしているのだと思う。

 

まとめ

双曲曲線そのものは経済的には非合理的だが、生存率に関する優位性があることから、我々の考え方に深く根ざした概念だと思われる。うまく活用することで、ユーザーにより熱中してもらえるゲームを作る手助けになるだろう。

 

 

 

ゲーム開発に使える心理学【権威への服従】

ゲーム開発に使える心理学として、権威への服従がある

 

権威への服従とは

政府や教授などの特定の権威が存在する場合、その権威に対する敬意や恐れなどから、その権威の指示や期待に従いやすくなる、という現象の事

日常における権威へ服従

日常における権威への服従は様々なところで確認できる。例えば有名なインフルエンサーが紹介した商品を良いものだと思って購入したり、教授などの専門職の人が紹介する方法論に従って行動しやすくなる。他には、何かしらの賞を受賞した、という実績も権威となる

ゲーム業界における権威への服従

ゲーム業界でも権威への服従はよく見られる。例えば有名ディレクター監修や、有名声優起用、場合によっては開発会社そのものも権威として成立するだろう。ゲームオブザイヤーなんてまさにその最たるものだ

ゲームにおける権威への服従の活用

ゲームにおいて権威への服従をどのように活用できるかを考えてみる

ストーリーテリング

ドラクエに代表されるように権威(王様、父親など)から指示を受けることによってプレイヤーは自然にストーリーを受け入れ行動を始めることができる。また権威にユーザーが受け入れがたい行動を行わせる(自分の村を裏切る)などさせてプレイヤーに心理的な葛藤を感じさせることもできる

チュートリアルやガイド

権威のある人達(先輩冒険者、司令官など)から指示を受けることで、彼らの行っていることの正当性を感じやすくし、ゲーム内での学習の効率を高める

行動への動機づけ

権威からの指示を受け、それを達成して称賛されることそのものが動機づけの強化になる

権威を擬似的に作成する

ランキングを作って競わせることで権威を擬似的に作成して、ユーザーに競わせることができる。MMORPGなどではギルドシステムなどによりギルドリーダーやサブリーダーの役職を作ることで他のメンバーに対して行動を喚起させやすくすることもできる。またその権威に執着するがゆえに、より熱中してプレイしてくれるユーザーもでてくるだろう

まとめ

権威への服従を活用することでユーザーの学習をスムーズにしたり、ストーリーへの没入をより深くすることができたりする。

参考

 

 

 

 

 

 

 

ゲームづくりに使える心理学【期待理論】

ゲームづくりに使える心理学として、期待理論を紹介する

 

期待理論とは

行動の選択や意思決定が期待される結果に基づいて行われる、という理論

シンプルだが我々は多くの場面でこの期待理論を利用して意思決定を行っている

日常における期待理論

日常においてわかりやすい期待理論といえばやはり食事だろう。我々は空腹になると不快を感じ、食事を行う。それは空腹という状態を解消したいからであり、かつ食事をとると空腹が解消されると知っている(期待している)からである。これがウォーキングなどだったらどうだろう、我々は運動では空腹が解消されないと知っている(期待できない)ので食事の代わりに運動をおこなうことはしない。

長期的な目線で見ると受験が挙げられる。目的の学校に入学したいがために、勉強という行動を起こす。もちろん合格という具体的な目標がなくても勉強する人はいるが、それは勉強することで知識欲を満たすことなどを期待しているからであろう。

期待理論を構成する3つの要素

期待理論は主に以下の3つの要素で構成される

1. 期待性(Expectancy)

2. 手段性(Instrumentally)

3. 価値(Valence)

期待性

自分がその物事を達成できると信じているレベル。

例えばジャンプする、というものはほとんどの人が達成できるのでレベルが高く、バク転だと多くの人は達成できないのでレベルがひくくなる

手段性

その物事を達成したときに望ましい結果を得ることができると信じているレベル

例えば給与がある。固定給の社員は一ヶ月働けば確実に一定の金額を得ることができるが、労働時間が安定しない人たちは働き方によって一定の金額を得ることができなくなることもあるだろう。

価値

自分が実際に得られるものに対して感じている価値のレベル

お金や減った体重、友達とも交流などがある

3つすべてが成り立つと人は行動を起こしやすくなる

今挙げた3つの要素が良いレベルで成り立つと人は行動を起こしやすくなる。逆にどれか一つでも極端に低いとその行動を起こすのは困難なものになるだろう。

期待性が低ければやってもできない、手段性が低ければやっても意味がない、価値が低ければそもそもやる意味がない、という形だ。

ゲーム開発に期待値論を活用する

ゲームにおいてユーザーに行動を促したい場合は価値理論の3つの要素それぞれに気を配るとよい

まずは期待性を担保する。ユーザーから見て絶対にクリアできないと感じるものではまずやる気は起きない。ユーザーの習熟度、そのときに想定される装備等を考慮した上で難易度を設定する

次に手段性を担保する、それを達成したら目的のものが手に入る、もしくは手に入れるチャンスがもらえると信じさせる。例えばお使い系のクエストの報酬だったり、敵撃破時のドロップアイテムがある

最後に価値を担保する。この敵を倒せば世界を救える。作りたかった装備を作ることができるなど、ユーザーが求める価値が提供させることを信じさせる

期待値理論から見たアンチパターン

期待理論からやってはいけない仕様のパターンを考えてみる

序盤から強すぎる敵

最初から全く歯がたたないような敵ばかりであれば、期待性が低くなる。最近は負けイベとか、序盤に強敵を配置して回り道させるなどの仕様があるが、それらはユーザーそういう仕様がゲームには存在する、と学習しているからこそなせるものだろう

 

報酬が不明瞭がお使いクエス

最近のゲームはクエストを達成するたびになにかしらもらえるのがお約束なのでアンチパターンというもののほどでではないかもしれないが、手段性を強化する一つの手段として報酬内容がわかるようにしたり、キャラクターに"いいものあげる"など発言させたりなどして明確に報酬がもらえるようにユーザーに伝えることができるだろう

 

価値を全く感じない報酬

ゲームが進んできて所持数がインフレしてきたものに関してはユーザーはあまり価値を感じなくなる。序盤のザコ敵の素材や、低すぎるゴールドなどが当たるだろう

報酬を多角化して価値を高める

アンチパターンで価値を感じない報酬にはユーザーは行動を起こしづらい、と書いたが、報酬を多角化することによってその価値を高めることができる。例えばザコ敵の討伐数による報酬があるだろう。討伐一回一回の価値は低くても積み重ねればそこそこの価値のものが手に入ると分かればユーザーもその行動に対して完全に無駄だとは感じなくなる。このようにユーザーの一つの行動に対して複数の価値が発生するような仕様を作ればユーザーはゲーム内で何をしても価値がある、と感じてくれるのではないだろうか

終わりに

個人的にこの理論で一番気になったのはそれぞれの要素に対してユーザーが信じているレベルに応じて行動が喚起される、ということだ。つまり実際の期待性や手段性、価値がどうであれ、ユーザーがそれぞれを高いレベルで信じる事ができれば自ずと行動してくれることだろう。どれほどうまくユーザーに信じてもらえるか、がゲーム成功の一つの鍵なのかもしれない

 

 

 

 

ゲーム作りに使える解析手法【フォルトツリー解析】

ゲーム作りに使える解析手法としてフォルトツリー解析を紹介する

フォルトツリー解析とは

発生して欲しくない事象からその原因となる要素を書き出し、それらの事象の発生原因、発生経路を明らかにする解析手法、故障木解析ともいう。現実では原子力プラント、化学プラント、交通システムなど幅広く応用され、一定の効果を発揮している。

フォルトツリー解析の方法

フォルトツリー解析の手順を簡単に説明する

1. 望ましくない事象を定義する

2. 定義した事象の発生原因となり得るものを列挙する

3. さらに発生原因を発生させる原因を列挙する

本来はここに発生確率や論理ゲートを用いてより正確に分析するのだが、一旦は上記の手順で肝となる部分は利用できるだろう。

ゲーム開発に対してのフォルトツリー解析の適用

この解析手法をゲーム開発に適用してみる。

1. 望ましく無い事象を定義する

個人ゲーム開発に置いて望ましくない事象は以下のようなものが挙げられるだろう

- ユーザーに認知されない

- ユーザーが紹介ページを訪れてもダウンロード(or購入)されない

- 大多数のユーザーが初日で離脱する

- 課金要素を入れたが全く利用されない

この中から"大多数のユーザーが初日で離脱する"事象の解析を行ってみる

2. 定義した発生原因を発生させる原因を列挙する

どのような原因でユーザーが初日で離脱するかを列挙する

- DL時間が長い

- ゲームの動作が重い、発熱がひどい

- ゲーム開始前に設定する項目が多い

- ゲーム開始時に覚えることが多い

- チュートリアルプレイで面白さを感じることができない

- チュートリアルが終わった後に何をすれば良いのかがわからない

- キャラクターが魅力的でない

- 事前に想定していたプレイ体験と現実のそれが解離している

- ゲームが難しすぎる/簡単すぎる

この中からさらに発生原因を掘り下げていく、"ゲーム開始時に覚えることが多い"を選んでみる

3. さらに発生原因を発生させる原因を列挙する

ゲーム開始前に覚えることが多い事象を発生させる原因を列挙する

- ゲーム要素が多い

- ルールが複雑

- 序盤に全ての機能をまとめて紹介している

- ゲーム開始時に全ての機能が解放された状態になっている

一つの経路しか出していないが以下の図のようになる

あとは他の事象に対しても同様に原因を深掘りしていく

本来のフォルトツリー解析ではここから各事象の発生確率を求めるのだが、今回はゲーム用に少し変えて、事象に対する影響が大きそうなものをマークしていき、それらから積極的に改善していく、という塩梅だ。

まとめ

ゲームの改善をするとき、どうすれば悪いことが発生しないかを考え、図に起こすことでゲーム全体を理解し、より効率的な改善策を出すことができるだろう。

参考

フォルトツリー解析 - Wikipedia

参考書籍

 

ゲームのアイデアだしに使える方法【バグリスト】

ゲームのアイデアだしに使える方法としてバグリストを紹介する

バグリストとは

タイマーを10分にセットし、不愉快なこと、出会った嫌なことをジャンルや新旧に囚われず、とにかく書き出すことによって作成するリストのこと。

不快なことを書き出すことにより、ストレス解消の効果があるほか、リストの中から解決するべき問題を見つけるためのヒントを得ることができる

ゲームのアイデアだしにバグリストを活用する

今までの経験からゲームに関する嫌なこと、不愉快なことをひたすら書き出してみる。

例えば以下のようなものだ

  • レベル上げがだるい
  • 難しくて全然クリアできない
  • ルールが覚えづらい
  • 課金している人と対戦すると全然勝てない
  • 久しぶりにプレイすると何をしたら良いかわからなくなる
  • キャラクターが好みでない
  • ゲーム内の移動がめんどくさい
  • ロードが長い
  • 値段が高い
  • 片手間で遊べない
  • 子供と一緒に遊べない
  • 敵の攻撃モーションがわかりづらい
  • なんでやられたのかがわからない
  • 謎が解けず先に進めない
  • コマンド入力がめんどくさい
  • 弱い敵とのバトルがめんどくさい
  • ゲームセンターでないとプレイできない

いくつか挙げたが他にも色々とあるだろう。

自分で項目を列挙したら、その中からゲームのアイデアにできそうなものや、ゲームを改善できるものを探してみる。

例えば"ゲーム内の移動がめんどくさい"という不愉快に対しては、改善策としてファストトラベルシステムを導入したり、移動中に見える景色や音楽を工夫することで飽きさせない仕組みを作ることができるだろう。さらにDeath Strandingのようにゲームの移動それ自体を目的にゲームをデザインすることもできる(厳密には移動ではなく繋がりを作ることが目的だが)。

まとめ

ゲームのアイデアだしや、改善策を考えたい時にはバグリストを活用してみるのも良いだろう。今まで気づけなかった自分の中にある新しい視点に気付けるかもしれない。

参考書籍

 

ゲーム作りに使える心理学【後知恵バイアス】

ゲーム作りに利用できる心理学として後知恵バイアスを紹介する

後知恵バイアスとは

とある事象が発生した時に自分はそれが発生することを知っていた、察知していたと感じること。

後知恵バイアスの実験

フィッシュホフとルースベイズは実験で、1972年のニクソン大統領の中国ソ連訪問に関する外交活動において、起こりうる結果を15項目挙げ、被験者に対してそれぞれどの程度発生するかという確率を推定してもらった。その中には"毛沢東ニクソンとの会談に応じる"、"アメリカは中国を承認する"、"数十年にわたり反目しあっていた米ソが何らかの重要事項で合意に達する"などが含まれた。

そして、ニクソンの帰国後に再び同じ被験者に対して自分たちが起きる可能性を推定した15項目に対して推定した確率を思い出してもらった。その結果、実際に起きた結果については自分がつけた確率を多く見積もり、起きなかった結果に対して自分がつけた確率を低く見積もった。

後知恵バイアスの弊害

後知恵バイアスには弊害がある。それはとある事象が発生したことを知ってしまった場合、その事象に対して自身が感じていた意見や感情の再構築が難しくなる、ということだ。つまり、とある事象において間違った意見を持っていたとしても、それが覆されるとその、間違った意見をそもそも持っていなかったのように感じるのだ。

成功者に対しても後知恵バイアスがかかるだろう。彼らが成功し、輝いているとは"あの人の成功はなるべきしてなった、最初からすごい人だと思っていた"と考え、仮にその後失敗しようものなら"実は胡散臭いと思っていた"などと感じる。

ゲームに対しての後知恵バイアス

ゲームに対しても後知恵バイアスがかかるだろう、とあるゲームソフトをプレイした時に、それが何かしらの賞を受賞したと言われてプレイするのと、販売してから売り上げが全く振るわなかったと言われてプレイするのでは、いくら正当にゲームを評価しようとしても聞いた実績に影響されてしまう。

このバイアスはゲームを評価するにあたっての障害となる。ゲームオブザイヤーを受賞したゲーム内の要素はどれも素晴らしいもので、個人開発で無名のゲームの要素は悪いものであるように感じてしまうのだ。これではゲーム内の要素を適切に評価することが難しくなり、実際はそれほど重要でないゲーム内要素を真似して、結果面白くないゲームが出来上がる。

グラセフが売れたからオープンワールドは素晴らしい、ダークソウルが売れたから死にゲーは中毒性がある、と考えるようなものだ。

後知恵バイアスへの対抗策 その1

後知恵バイアスにかからずにゲームを評価するための方法として世間の評価を調べずにプレイする、というものがある。一度評価を知ってしえば、それは自分の評価に少なからず影響してしまうため、そもそも評価自体を取り込まないようにする。気になるゲームを見つけた時に、レビュー記事や購入サイトの評価を読まずに購入し、プレイ中にゲームの感想を記録してからクリア後に評価を見れば、自分と他プレイヤーが感じたことの違いがわかる。それらを比較しながらゲームのどの部分が良く、どの部分が悪かったのかを考える。

後知恵バイアスへの対抗策 その2

そのゲームの評価を心の中で反対のものに上書きしてプレイしてみるのも一つの方法だ。例えばゲームオブザイヤーを受賞したゲームを、全然売れなかったゲームとしてプレイしてみる。そうするとどんなに良いゲームでも、体験のアラが見えてくる。逆に売れていないゲームでも、ゲームオブザイヤー受賞ゲームとして遊ぶと、素晴らしい部分に気付きやすくなるはずだ。

まとめ

人はものを評価する時に前評判に大きく影響を受けてしまい、ゲームも例外ではない。

そもそもゲームは体験を提供するものであり、その体験を求めているかどうかでそのゲームに対する個人の評価は変わるものだ。

周りの評価に惑わされず、自分はこのゲームが面白かった、つまらなかったと主張できるようにしていきたい。

参考書籍