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ゲーム作りに使える心理学【決定麻痺】

今回はゲーム作りに使える心理学として決定麻痺を紹介する

決定麻痺

人は選択肢が多い時時に、その選択を先延ばしにしたり、選択自体をやめてしまったりすることである。決定麻痺に関する有名な心理実験としてコロンビア大学のジャムの実験がある。

日常の決定麻痺

日常で起きる決定麻痺としてありがちなのは、やはり買い物時だろう。

例えば家のパソコンの調子が悪く、家電量販店で新しいパソコンを買いに行ったとする。詳しい人なら自分の求める選択をすぐできるだろうが、そうではない人からは陳列されているパソコンが全て同じに見える。カタログを見てもよくわからない文字が並んでいる。一つ一つ店員に聞いて考えることはできるが、大変な労力だ。そこで、"まだ動いているし今回はいいや"と購入を先送りにしたり、店員の勧めるがままのパソコンを購入したりする。

他には飲食店で注文する時もそうだろう。ランチでカレーが食べたいと思ってレストランに言ったら他にも大好物のメニューがたくさんある。そしてあれが良いかも、これが良いかもと時間をかけて迷うわけだ。流石にランチ自体を取りやめることはないだろうが。

なぜ決定麻痺が起きるのか

これは選択肢が多い時と少ない時で、私たちがどのように感じるのか、を考えるとわかりやすい。まずは選択肢が多い時だ。たくさん選択肢がある中で自分が最も満足するものを選ぼうとする場合、とても大きな労力が必要になる。可能性のある選択肢を全て吟味し、それらを順位付けすることは骨の折れる作業である。

逆に選択肢が少ない場合は、それらを吟味することも、順位付けをすることも比較的簡単だろう。それができれば、自分が最も満足するであろう選択をすることができる。

この自分が最も満足する選択を行うことに対する労力の違いが決定麻痺に現れる。

一言でまとめると、選択肢が多い時に決めることはとても疲れることで、私たちは疲れることが嫌いだ、ということである。

ゲーム作りでの決定麻痺の落とし穴

ゲーム作りにおいて陥りやすい決定麻痺の落とし穴を考えてみる。まずなんと言ってもゲームにおける選択肢を増やしすぎることだろう。例えば戦闘システムを作成するとして、移動、剣で攻撃などの戦闘コマンドを30個作ったとする。これで5人パーティで10ターンの戦闘をしたら30x5x10=1500通りも組み合わせができる。なんて奥の深いゲームなんだ、とプランナーは思っていてもプレイヤーはそうは思わない。毎ターン30個のコマンドを全員分吟味しては一回の戦闘で疲れ果ててしまうだろう。そして行き着く先は使うコマンドの固定化か、プレイヤーの離脱である。

数年間運用したソーシャルゲームでも決定麻痺を見ることができる。数年間せっせとユーザーの要望に答え続けてきた結果、仕様、機能が膨らみ簡単には全貌が把握できないレベルになっている。それに合わせてUIもガンガン追加されるため、初心者にはもはやどのボタンを押したら何が起きるのかも把握できない。そしてゲームの面白さを体験する前に、その情報量に追い立てられ、離脱してしまう。

機能が多いことは必ずしも良い結果になるわけではない。選択肢だけ多分に用意し、実際の決定をユーザーにぶん投げることは考え直したほうが良いだろう。

決定麻痺の回避方法その1 選択肢を絞る

選択肢が多くてユーザーが疲れるならば減らせば良い、ということだ。選択肢をいたずらに増やさない、面白くないと思った時に簡単に仕様を付け足さない、今ある選択肢の中から本当に必要なものだけ残す、というところから始める。この仕様の圧縮はユーザーに提供したい体験の定義や、仕様の吟味などが必要なため、なかなか大変な作業となる。

決定麻痺の回避方法その2 機能を制限する

たびたび機能制限に関しての効能を話しているが、ここでも登場する。考え方は回避方法その1と同じだ。序盤では機能を絞り、ユーザーにできることを限定する。そうすれば自ずとできる選択肢は絞られプレイヤーはその中から気に入った行動を、自信を持って行うことができる。

決定麻痺の回避方法その3 おすすめをする

決定麻痺は選択肢が多いことによってもたらされると話したが、他の方法でも発生する。それは決定する物事に対しての十分な知識を持ち合わせていない時だ。選択肢が少なかったとしても、それらが具体的に自分に対してどれだけの価値があるのかを判断できない。例えばプレイ開始前の難易度選択が挙げられる。まだ一度もプレイしたことのないゲームの難易度をいったい誰が適切に選択できようか。この時はゲームでおすすめ難易度を提示してしまうのが良いだろう。迷ったらこれ、というやつだ。

あとは初心者ミッションもおすすめをする方法の一つだ。これをやっておけばゲームの面白さが体験できる、というところまでプレイヤーをエスコートしよう。あとはその世界を勝手に楽しんでくれるだろう。

まとめ

人は自分で決めることが好きだが、同時に嫌いでもある。決定麻痺によりプレイヤーがゲーム内で迷ってしまわないように、迷ったとしてもきちんと誘導できるようにしていきたい。

最初のポケモンは3匹から選ぶからこそ最高の相棒になるのだ。

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