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ゲーム作りに関するあれこれ

ゲームづくりに使える心理学【期待理論】

ゲームづくりに使える心理学として、期待理論を紹介する

 

期待理論とは

行動の選択や意思決定が期待される結果に基づいて行われる、という理論

シンプルだが我々は多くの場面でこの期待理論を利用して意思決定を行っている

日常における期待理論

日常においてわかりやすい期待理論といえばやはり食事だろう。我々は空腹になると不快を感じ、食事を行う。それは空腹という状態を解消したいからであり、かつ食事をとると空腹が解消されると知っている(期待している)からである。これがウォーキングなどだったらどうだろう、我々は運動では空腹が解消されないと知っている(期待できない)ので食事の代わりに運動をおこなうことはしない。

長期的な目線で見ると受験が挙げられる。目的の学校に入学したいがために、勉強という行動を起こす。もちろん合格という具体的な目標がなくても勉強する人はいるが、それは勉強することで知識欲を満たすことなどを期待しているからであろう。

期待理論を構成する3つの要素

期待理論は主に以下の3つの要素で構成される

1. 期待性(Expectancy)

2. 手段性(Instrumentally)

3. 価値(Valence)

期待性

自分がその物事を達成できると信じているレベル。

例えばジャンプする、というものはほとんどの人が達成できるのでレベルが高く、バク転だと多くの人は達成できないのでレベルがひくくなる

手段性

その物事を達成したときに望ましい結果を得ることができると信じているレベル

例えば給与がある。固定給の社員は一ヶ月働けば確実に一定の金額を得ることができるが、労働時間が安定しない人たちは働き方によって一定の金額を得ることができなくなることもあるだろう。

価値

自分が実際に得られるものに対して感じている価値のレベル

お金や減った体重、友達とも交流などがある

3つすべてが成り立つと人は行動を起こしやすくなる

今挙げた3つの要素が良いレベルで成り立つと人は行動を起こしやすくなる。逆にどれか一つでも極端に低いとその行動を起こすのは困難なものになるだろう。

期待性が低ければやってもできない、手段性が低ければやっても意味がない、価値が低ければそもそもやる意味がない、という形だ。

ゲーム開発に期待値論を活用する

ゲームにおいてユーザーに行動を促したい場合は価値理論の3つの要素それぞれに気を配るとよい

まずは期待性を担保する。ユーザーから見て絶対にクリアできないと感じるものではまずやる気は起きない。ユーザーの習熟度、そのときに想定される装備等を考慮した上で難易度を設定する

次に手段性を担保する、それを達成したら目的のものが手に入る、もしくは手に入れるチャンスがもらえると信じさせる。例えばお使い系のクエストの報酬だったり、敵撃破時のドロップアイテムがある

最後に価値を担保する。この敵を倒せば世界を救える。作りたかった装備を作ることができるなど、ユーザーが求める価値が提供させることを信じさせる

期待値理論から見たアンチパターン

期待理論からやってはいけない仕様のパターンを考えてみる

序盤から強すぎる敵

最初から全く歯がたたないような敵ばかりであれば、期待性が低くなる。最近は負けイベとか、序盤に強敵を配置して回り道させるなどの仕様があるが、それらはユーザーそういう仕様がゲームには存在する、と学習しているからこそなせるものだろう

 

報酬が不明瞭がお使いクエス

最近のゲームはクエストを達成するたびになにかしらもらえるのがお約束なのでアンチパターンというもののほどでではないかもしれないが、手段性を強化する一つの手段として報酬内容がわかるようにしたり、キャラクターに"いいものあげる"など発言させたりなどして明確に報酬がもらえるようにユーザーに伝えることができるだろう

 

価値を全く感じない報酬

ゲームが進んできて所持数がインフレしてきたものに関してはユーザーはあまり価値を感じなくなる。序盤のザコ敵の素材や、低すぎるゴールドなどが当たるだろう

報酬を多角化して価値を高める

アンチパターンで価値を感じない報酬にはユーザーは行動を起こしづらい、と書いたが、報酬を多角化することによってその価値を高めることができる。例えばザコ敵の討伐数による報酬があるだろう。討伐一回一回の価値は低くても積み重ねればそこそこの価値のものが手に入ると分かればユーザーもその行動に対して完全に無駄だとは感じなくなる。このようにユーザーの一つの行動に対して複数の価値が発生するような仕様を作ればユーザーはゲーム内で何をしても価値がある、と感じてくれるのではないだろうか

終わりに

個人的にこの理論で一番気になったのはそれぞれの要素に対してユーザーが信じているレベルに応じて行動が喚起される、ということだ。つまり実際の期待性や手段性、価値がどうであれ、ユーザーがそれぞれを高いレベルで信じる事ができれば自ずと行動してくれることだろう。どれほどうまくユーザーに信じてもらえるか、がゲーム成功の一つの鍵なのかもしれない