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ゲーム作りに関するあれこれ

ゲーム作りに使える心理学【時間割引】

 今回はゲーム作りに使える心理学として、時間割引を紹介する

時間割引

人はすぐにもらえる報酬ほど価値が高いと感じ、もらえるまで時間がかかる報酬は相対的に低く感じる、ということ。例えば今すぐ1万円もらうのと1年後に1万1000円もらえるのだと今すぐ1万円もらった方が価値が高いと感じる、ということだ。

日常にある時間割引

例えばダイエットだ。適正体重と言う将来の大きな報酬と、カロリー満点のハンバーガーという目の前の小さな報酬とを比べた時に、目先の欲望に負けてつい食べ過ぎてしまったという話はよく聞く。

受験勉強も時間割引が働く。志望校に入学することは本人にとっては大きな報酬だが、受験がまだ先の場合はその報酬を小さく感じてしまう。そこで身近で手に入れやすい報酬であるゲームをプレイすることや友達とおしゃべりすることの方を優先してしまうのだ。

時間割引は本能の産物

第4次産業革命が叫ばれて久しい昨今、持っている情報や自分のスキルが今後の生き方、働き方に直結する現代で、この時間割引とはなんと憎たらしいものだろうか。こいつのせいで思うように体重は減らず、成績は上がらない。

しかしよく考えてみるとこの遠くの大きい報酬より近くの小さい報酬を優先する考え方は、今よりもっと不確実性が多かった時代、例えば狩猟採取社会に生きる我々の先祖から見たら合理的な判断であっただろう。当時は生きるか死ぬかの時代で、狩猟や採取のちょっとした失敗が死に繋がる。つまり時間をかけて大きな報酬を狙っていたら得る前に死んでしまう可能性があったのだ。そこで小さくても確実の報酬を手に入れておくことがその時の生きる知恵だったのだろう。そしてこの考え方は現代を生きる我々にもしっかりと引き継がれていく。

マシュマロテスト

この時間割引の適正を測る方法として面白い実験がある。マシュマロテスト、というものだ。これは4歳ほどの子供を対象に、まずマシュマロを1つ渡し、15分間それを食べるのを我慢できたらマシュマロをもう1つ渡すと伝え、彼らが我慢できずにマシュマロを食べてしまうかどうかを判断するものだ。その結果、約1/3ほどの子供がマシュマロを食べるのを我慢できたのだが、彼らは成長したのち受けた大学進学適性試験(SAT)の点数が、食べてしまった子と比べて大幅に高かったそうだ。

彼らは時間割引の効いた15分後のマシュマロ2個の方が今のマシュマロ1個よりも価値が高いと感じたのだ。もちろん実験時はそんな価値云々などは考えておらず、マシュマロのことばかり考えていたのだろうが、その感性がその後の好成績につながったのだろう。

ゲーム作りでの時間割引の応用 その1 すぐさま報酬を与える

時間割引から、すぐさま報酬をもらえる方がプレイヤーが価値を感じるということになる。であれば何かを達成した時にすぐさま報酬を与えてしまおう。報酬と言ってもこまめにパラメータを上げてやる必要があるわけではない、例えばコントローラや端末がブルっと震えたり、かっこいい演出が出たりするだけでも十分な報酬である。プレイヤーの一挙手一投足に対してちょっとフィードバックを入れたり、演出を追加する。この小気味良い演出のことをしずる感と言って、手触りの良いゲームはこのしずる感が絶妙に組み込まれており、ただ移動しているだけなのに楽しい、という感じになる。このしずる感に関しては後ほどしっかりまとめたい

ゲーム作りでの時間割引の応用 その2 報酬を適切な位置に設定する

いくら大きな報酬を用意したとしても時間割引が効いてしまっていたらプレイヤーはその報酬の価値を小さく感じてしまう。例えば、RPGで最初の町でいきなり"あのラスボスを倒せ!やることはレベル上げだけだ!"と言われたらどうだろうか、報酬のあまりの遠さにやる気がなくなってしまうのではないだろうか。それを防ぐためにゲーム中のちょうど良いところに報酬を散りばめる。これは少しプレイしたら獲得できるレベルのものだ。これでプレイヤーはその近くて小さい報酬を獲得しようと行動する。そしてそれらが積み重なった結果ラスボスを倒すという大きな報酬を手に入れるのだ。

まとめ

全く同じ報酬でも、それらどのくらいの遠さにあるかが、プレイヤーがその報酬に対して感じる価値を左右する。どんなプレイヤーでも、ゲーム内のどんなタイミングでも、適切な報酬が提示できているかは、常に頭の中に入れておく必要があるだろう。

参考

マシュマロ実験 - Wikipedia