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ゲーム作りに関するあれこれ

ゲーム作りに使える心理学【集団思考】

ゲーム作りに使える心理学として集団思考を紹介する

集団思考の罠

集団で意思決定を行う場合に不合理、あるいは危険な意思決定がされること。集団浅慮ともいう

集団思考の8つの症状

米国の心理学者であるアーヴィング・ジャニスは、集団の心理的傾向をモデル化し、以下の8つの項目に分類した。

  • 自分たちは絶対大丈夫という楽観
  • 外部からの警告を軽視し、自らを省みない
  • 自分たちを正統とし、倫理や道徳観を無視
  • 外部の集団への偏見・軽視
  • 組織内で異論を唱えづらい
  • 組織の意思に対して疑問を持つことへの罪悪感
  • 全員の意見の一致が前提
  • 集団の合意を覆す情報を見ようとしない

これは米国の史実をもとに作られた分類だが、我々がチームでゲーム作りを行う上での反面教師とすることができるだろう。今回はこの内のいくつかをピックアップし、ゲーム開発の現場に当てはめながら考えてみる。

外部からの警告を軽視し、自らを省みない

これはユーザーレビューが考えられるだろう。どんなゲームであれある程度売れたり、ダウンロードされたりしたゲームにはレビューがつくものだ。その中にはただの悪口の場合もあれば、それなりにゲームを遊んだ上で不満点を上げてくれるものもある。これらを"プレイヤーはそういうものだから、彼らはゲーム作りを知らないから"とおざなりにするのはとても惜しいことだ。

別に彼らの言うとおりに改修したり、機能追加したりしなくても良い。むしろプレイヤーの要求を鵜呑みのするのは危険だ。ただプレイヤーがどのような不満を持っており、ゲームのどのような部分に改善点があるかを知るには有益な情報となるだろう。

組織内で異論を唱えづらい

これはチーム内にある程度経験を持っていたり、地位をもっていたりする人がいる場合に発生することが多いと感じる。過去の有名なゲームタイトルの開発メンバーだったり、開発歴が20年以上あるような人がいると必然的にそのような人に発言権や決定権を持っていかれやすい。仮にその人がチーム開発の進め方をある程度心得ていたとしても、開発経験が少ない人や、組織内できちんと適応してきた人は彼らに対して積極的に意見しようと思わないだろう。なぜならば彼らのほうが経歴も経験もあるのだから。

ここで問題になるのはそのような経歴を持った人がその時の開発において適切な助言や意思決定ができるとは限らないことだ。ここ20年を見てもゲームのあり方やプレイヤーの楽しみ方は大きく変わっており、それらに適応し、その時々の時流に応じたゲームづくりができる人材はそう多くはない。

全員の意見の一致が前提

これもよくあることだろう。会議などで何かを決めるときに全員の意見が一致するまで議論を繰り返す、ということだ。これはゲームのプランニングに関しては特に危険な傾向である。なぜならば人が面白いと感じる体験そのものがその個々人の経験や知識に紐付いており、全員が手放しで素晴らしい、と思えるような体験はこの世に存在しないからである。プランナーそれぞれの意見を一致させるために体験同士を歩み寄らせれば中途半端なものができてしまうだろう。喜劇と悲劇を組み合わせても傑作はできない。

まとめ

集団思考の罠はその組織に深く根付いており、1人のメンバーがそれを改善することはかなり難しいものになる。

もし権限がなく、このような集団思考に疲弊しているのであれば職を変えたり、一人でゲームを作ったりするのもありだろう。仮に権限を持つ立場にいるのであれば集団がこのような罠に陥らずに合理的で実りのある意思決定をするための行動を起こしたいものだ。

関連

ゲーム作りと知覚の差異 - gametips

参考

集団思考 - Wikipedia

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