今回はゲーム作りに使える心理学としてツァイガルニク効果を紹介する
ツァイガルニク効果
人は達成できなかったことや中断している事柄の方を、達成した項目よりもよく覚えている、ということ。ソビエトの精神科医兼心理学者であるブルーマ・ツァイガルニクが明らかにした。
日常にあるツァイガルニク効果
誰かが何かを話しかけたのち、いやなんでもない、と話を切り上げてしまった時にその話の続きが気になってしまった事はないだろうか。もしくは、ドラマを見ている時に、いよいよクライマックス、というところで放送が終わってしまったときもそうだろう。このように物事が中断されてしまったときに、つい気にしてしまうことがツァイガルニク効果である。
この効果はマーケティングでもよく利用されている、たとえばテレビCMでストーリーを展開し、わざと打ち切る。そして"続きはWebへ"という感じにプロモーションサイトへ誘導するのだ。
ゲームにおけるツァイガルニク効果
ではゲームにおいてこの効果がどのように活用できるか考えてみる。この効果はゲーム体験そのものの構築や、プレイヤーが継続してくれるような仕組みづくりなどに役立つだろう。
ツァイガルニク効果の活用その1 物事の閉合そのものをゲーム体験とする
物事が中途半端になっていることが気になってしまう、ということはその物事を完成させることにモチベーションがある、と取ることもできる。この物事を完成させる体験をゲームのコア体験としてしまおう、ということだ。この体験はパズル系のものと相性がよいだろう。不完全な状態にあるパズルをプレイヤー自身の手で完成までもっていくわけだ。ハイパーカジュアル系のゲームにもこのタイプがあるのでいくつか紹介する。
ツァイガルニク効果の活用その2 ゲーム内に伏線を作る
ゲーム内に伏線を作っておき、それをゲームの進行とともに紐解いていく。プレイヤーは伏線の内容を知りたいモチベーションでゲームをプレイし、結果を知ることで満足する(もちろん内容の善し悪しもあるが)。
Horizon Zero Dawnが良い例だろう。これは動物の姿を模した機械に支配された世界の話で、主人公は自分の出自とこの世界の謎を解くために冒険に出かける。始めに大きな謎をもってくることで、それを解きほぐすことをプレイのモチベーションの一つとする。
ちなみに伏線はこれほど大規模なものでなくて良い。例えば、RPGである村に入ったら村人が全員無口だった、などでもよい。プレイヤーが気になり、答えを知りたいと思ってもらえばよいのだ。
ツァイガルニク効果の活用その3 やるべきタスクを尽きさせない
ゲーム中に様々なタスクを作成して、それらを並列に取り掛かることができるようにする。プレイヤーがあるタスクを行ったら、他のタスクが途中まで進み、もうすこしでそれがクリアできるようになる。そのタスクをクリアしたらまた別のタスクが待っているという塩梅だ。重要なのは並列であることだ。一つのタスクが終わったら次のタスクがはじまるという仕様では、タスクが終わったときの満足感と、次のタスクを始めるまでの開始コストが合わさってしまい、プレイのブレークポイントとなってしまう。
ただし、多くのタスクをプレイヤーに課しておくのも良くないだろう。やるべきことが多いとプレイヤーが決定麻痺を起こしてしまい、タスクの着手に影響がでるためである。
ツァイガルニク効果の活用その4 キャラクターの成長パラメータに波をつける
一般的なRPGはレベルが上がれば各種パラメータが一度に上がるが、それだとプレイヤーは次のレベルアップまでコツコツと経験値を貯めなくてはいけなくなる。次のレベルアップまでの必要経験値が膨大であればその目標の遠さにモチベーションも下がってしまうだろう。
そこでキャラクターの主要パラメータごとにレベルアップの方式を変更するのだ。例えば特別なアイテムを4つで体力最大値アップ、経験値で基本能力アップ、スキルポイントでスキル獲得、などである。こうすれば、1つのパラメータをレベルアップしたら他のパラメータのレベルアップ進捗が途中になり、次はそちらを上げたくなる欲求に駆られる。
ゼルダの伝説Botwはこの成長の波の組み合わせがうまい。特殊アイテムとして克服の証とコログの実があり、それらを複数集めることでパラメータを強化できる。これにストーリーや装備の波が相まって常に何かしらが中途半端な状態になるのだ。
まとめ
プレイヤーに継続プレイのモチベーションをもってもらうために、このこの心理効果を活用することができるだろう。ただし、この効果はプレイヤーが対象となるタスクに対して一定の達成動機を持っていることが前提である。このテクニックを適用するタスクはきちんと吟味することが必要だろう。
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参考
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Design Rule Index 要点で学ぶ、デザインの法則150