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ゲーム作りに関するあれこれ

ゲーム作りに使える心理学【損失回避】

心理学のバイアスである損失回避をゲーム作りに応用する方法を考えてみる

 

損失回避とは?

人は得するよりも損することを避けようとする法則である。つまり、100万円をもらえるよりも100万円を失う方が辛く感じる、ということだ。これは古来からの人々の生活を考えると納得しやすい、例えば食べ物があって、それが増えるのは満足感を増やすだけだが、なくなるのは死に繋がる可能性があるからだ。

 

損失回避をゲームに応用する

この損失回避がどのようにゲームに応用されているか見てみよう。

 

この損失回避を一番多く盛り込んでいるのはやはりソーシャルゲームだろう。

体力システムを例にして考えてみる。体力システムはゲームをプレイするのに体力を消費し、なくなった体力は時間経過で回復する、という物だ。この体力はゲームをプレイする権利であり、プレイヤーにとっては資産となる。このシステムのミソは体力が満タンになると時間経過しても体力がそれ以上増えない、ということである。つまり体力がない状態であれば本来獲得できていたゲーム資産を失ってしまう、ということだ。この事実はプレイヤーにとって損失となり、プレイヤーはそれを回避するためにゲームを起動し、体力消費に勤しむことになる。

他にも初心者限定パックや特別オファーなど普通の課金アイテムよりも比較的お得な時間制限付きアイテムも損失回避を利用しているだろう。お得にアイテムを購入できる事はプレイヤーの権利(資産)であり、時間が過ぎてしまえばその権利を失ってしまうことになる。

 

他の例をあげると最近盛り上がりを見せているハイパーカジュアルというゲームジャンルも損失回避をうまく取り込んでいる。それは自機復活機能である。これはゲームをプレイしている途中に敵などにやられてしまった場合、30秒ほどの動画広告をみることでプレイの途中から復帰する機能である。やられた時にそのままステージを終わることで今までの進捗がなくなることを嫌うユーザーが動画広告をみる、ということだ。

 

ここまで2つのゲームジャンルの損失回避の応用を説明した。基本的なロジックはプレイヤーに権利(資産)を与え、その権利にわざと制限をかけ、それを獲得するためにはゲームプレイ、課金、動画視聴など企業の売り上げに寄与するアクションをとってもらう、ということだ。では開発/運営側からすればゲームプレイに制約をかけてその解放のために課金や動画広告視聴をオファーする機能を沢山盛り込めば良いか、といえばもちろんそうではない。制約だらけで、何かするたびに損失回避のためにプレイヤーに負担をかけるゲームが面白いとは思わないし、損失回避でプレイヤーの行動を縛ってしまうと、もはや楽しむのではなく、義務でゲームプレイをしてしまうようになってしまうからだ。これではゲームの本質であるプレイヤーに求められている体験を提供する、ということが達成できなくなる。求められている体験を提供できなければプレイヤーは自ずと去っていく。

 

まとめ

今回はゲーム作りに使える心理学として損失回避を紹介した。この心理バイアスはゲームだけではなくマーケティング全般で利用されている。甘いオファーに惑わされて財布の紐が緩まないようにしたい。