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ゲーム作りに関するあれこれ

ゲーム作りにおいて、プレイヤーにして欲しい体験を定義することの開発における効能

以前の投稿で、プレイヤーにして欲しい体験を定義することの重要性を整理してみた

ゲーム作りにおいて、プレイヤーにして欲しい体験を定義することの重要さを整理する - gametips

今回はこの体験の定義を行うことで開発においてどのような効能が出てくるかを考えてみる

仕様を決めるときの方針になる

プレイヤーにして欲しい体験を予め定義しておくことで、それをゲーム仕様を考える時の方針にすることができる。例えばソウルシリーズに代表される死にゲーと言われるジャンルは、難易度の高い課題に対して、何度も失敗しながら挑戦し、それをクリアしたときの達成感がプレイヤー体験として大きいだろう。このようなものをコア体験と定義すると、プレイヤーキャラクターの成長度合いや、敵の配置、強さなどの仕様を決定する時に役に立つ。例えばある仕様を導入した場合、コア体験を増幅することができるか、それもと体験を阻害するものになるかを考えることで、その仕様を入れるべきかどうかを決めることができる。

複数人で仕様を決める場合でもこのコア体験を事前に考え、共有することでより建設的な話し合いもできるだろう。例えば、ある仕様に反対する時に単純に"面白くないと思うから"と伝えるのではなく、"このゲームのコア体験にこのような理由で即していないから"と伝えたほうが、では具体的にどの部分がいけないのか、工夫することで逆にコア体験を強化することができないのか、などの話し合いができる。

面白い、面白くないはあくまで人の主観であり、かつ主観はなかなか共有しづらいものである。その面白いをもう少し具体的に細かく分けて体験として定義し、それを目的地を指し示すコンパスとしてチームメンバーに共有することで、より一丸となって開発を進めていくことができるだろう

チームメンバーによる見えない仕様の品質向上

まず見えない仕様とは何かを説明する。これは仕様書に存在しないが実装する必要のある項目のことをさす。例えばゲーム中の街を作る時に、その街の大体の大きさ、時代、住人の特徴は定義されていても、それらを構成する要素を具体的に、座標〇〇の位置に大きさXXで材質△△の頂点数◎◎のモデルを角度□□でおくなど細かくは決めてはいないだろう。そこまで厳密に仕様を切る事はかなりの重労働であり、そこまでプランナーが事細かく決めていたら時間がいくらあっても足りなくなる。納期が短い上に仕様変更が多く、燃えやすいと言われるゲーム開発においては尚更だろう。

よってあまりにも細かい仕様に関しては記述せず、作業者に任せてしまう事はよくある事である。これが見えない仕様である。

この見えない仕様はその明文化されていないその性質故に品質が作業者によって変わってくる。悪いパターンだと作業者から挙がってきたものが明文化された仕様には沿っているが、目的の体験を適切に提供できないと感じた場合だ。その結果リテイクが発生し、工数や予算がかかることに加えて、仕様に沿って作ったのにリテイクをもらった作業者側も腑に落ちないものがある。

もし事前にそのゲームでその画面でプレイヤーが感じて欲しい体験を共有することができていれば、見えない仕様を作成する時にその体験をベースに、理想により近いものを作ることができるだろう。

まとめ

抽象的な話が多くなったが、重要な事は、プレイヤーにして欲しい体験がより良いゲームを作るためのコンパスとなり、開発をする上での大きな手助けになる、という事だ。

ただし、そのコンパスが正しい方向を指し示している前提の話である。