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ゲーム作りに使える心理学【非注意性盲目】

ゲーム作りに使える心理学として非注意性盲目を紹介する

非注意性盲目

人はなにかに集中しているときに、明らかに視界に入っている異常な刺激を知覚しそこなうことがあること。

非注意性盲目の実験

まずは以下の動画を見てほしい。白い服を着たチームと黒い服を着たチームがボールをパスしあっているので、白い服を着たチームが何回パスをしたか、を数えてほしい。

この後に動画の解説があるが、できれば解説を見る前に挑戦したほうが良いだろう。この動画が何であるか知っている人はそのまま進んでほしい。

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以下ネタバレ

あなたは画面中央を横切るゴリラの気ぐるみに気づいただろうか。この動画は非注意性盲目を検証するためのものであり、ボールのパスカウントに集中していた被験者の約半分が気ぐるみに気づけなかったのだ。

人は平常時であれば明らかに見逃すはずのない刺激を、集中しているときには、認知し損なうことがある、ということである。

日常にある非注意性盲目

非注意性盲目は日常生活で常に発生している。考えことをしているときに周りが見えづらくなるのはもちろんだが、気になることや興味を持っていることに対しても見えるものが変わってくる。例えば新しい服を買おうとしているときに他人の服装がよく目に入ることはないだろうか、これは選択的注意といって、大量の情報の中から本人にとって重要だと思われるものに注意力を投下しているからだ。このことから、逆に興味を持っていない項目は、注意力が払われず、結果的に認知できなくなる。同じ場所で同じものを見ていたとしても、見る人によって見えるものが異なってくるのだ。

このことから人の注意力が重視されている広告、安全対策、警備システム業界などではどうやって人に注意を向けてもらえるかが重要になってくる。

ゲームにおける非注意性盲目

非注意性盲目とは厄介な代物だ。なぜならばプレイヤーの注意力を然るべき場所に投下してもらわないと覚えるべきゲーム知識を覚え損なったり、プレイ体験を毀損させたりしまう可能性があるからだ。

ではどのようにこの法則と付き合っていけばよいかを考えていく。

非注意性盲目との付き合い方その1 注意を適切な場所に向けさせる

エフェクトやカメラワーク、振動などのフィードバックでプレイヤーの注意を適切な場所に導く。例えばステージ上に光るものがあったり、ムービーの最後に特定の場所や道がズームされたらそちらに注意が向くだろう。チュートリアルなどプレイヤーに特定の道順を通ってほしい場合は、その道順に沿って注意の種を置くのである。ここで気をつける点は目を引くオブジェクトを複数置かない、ということだ。

目の前の道を進んでほしいのに違う方向に焚き火があったらそっちに行ってしまうかもしれない。村人の話をちゃんと聞いてほしいのに後ろで変な生き物がうねうね動いていたら話の内容が頭に入ってこないかもしれないのだ。

非注意性盲目との付き合い方その2 必要最低限の情報を提示する

チュートリアルでプレイヤーに何かを覚えてほしいときは、その覚える動作を行うことにのみ集中できるような場を整えればよいだろう。例えば攻撃方法をスライドなどで一気に見せていきなり実践をさせてみたり、チュートリアルで完全に対応しないとやられてしまったりするのは良くないだろう。前者ではたくさんある中でどれに注意を払うべきかわからず、後者ではコマンドを覚えることよりも生き残ることに注意を払ってしまうからだ。

覚えてほしい項目のみに関連するUIのみを表示できればなお良いだろう。移動と攻撃を覚えてほしいときに、それらに関係ない必殺技ゲージやアイテムショートカットなどのUIを隠しておくと、より集中してプレイできると考える。

※個人的には死んで覚える系ゲームは好きだが...

非注意性盲目との付き合い方その3 重要な情報はしっかりと主張させる

重要な情報はしっかりと主張するべきだ。例えば大ダメージを受けたときや必殺技ゲージが溜まったとき、敵に見つかったときなどが挙げられる。ゲームをプレイしているときにこのようなゲーム的に重要なイベントが起きたとき、非注意性盲目を突破してユーザーにそれを知らせる必要がある。プレイヤーに自分が置かれている状況をきちんと認識してもらい、そこから選択、行動してもらうことが重要である。

これはメタルギアソリッドが良い例である。あの有名な敵に見つかったときのリアクションである。敵の頭の上に大きなビックリマークが出るとともに、緊急性を感じさせる音がなる。このフィードバックを受けて的に見つかったことを認知しそこねるプレイヤーはそうそういないだろう。このフィードバックによってプレイヤーは自分の状況を適切に認識し行動を起こすことができるのだ。

重要な情報を伝えそこね、プレイヤーによくわからないまま不利益を被ったように感じさせることは避けたい。

まとめ

人は簡単に見落としをするし、払える注意力にも限界がある。

プレイヤーに覚えてほしいこと、注意を払ってほしいことがあるのならば、きちんとお膳立てをすることも考えておくと良い

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