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ゲーム作りに関するあれこれ

ゲーム作りに使える心理学【自己決定理論】

ゲーム作りに使える心理学として自己決定理論を紹介する

動機づけに関連する内容のため、以下を先に読んでいるとわかりやすいだろう

ゲーム作りに使える心理学【外発的動機づけ、内発的動機づけ】 - gametips

自己決定理論

内発的動機づけの根底には、有能性、自律性、関係性という3つの先天的な心理的欲求がある、ということ。有能性は自分が能力があってほしいという欲求。自律性は自分自身で行動を決めたいという欲求。関係性は他者と結びつきを持ちたいという欲求。人はこれらの欲求が満たされることで内発的動機づけが促進される。

自己決定理論と生存本能

今挙げた3つの心理的欲求に対する反応は人類が生き残るために進化させてきたものではないだろうか。能力があれば危機的な状況でも生き残る可能性が高く、自立能力があれば周りに頼れる仲間がいなくても生活することができ、関係性を持っていれば群れの仲間に助けてもらえる可能性が高くなる。我々は生きる能力を効率よく獲得するために、これらの欲求を手に入れるための行動に対して内発的に動機づけされる、ということだ。

自己決定理論と子供の遊び

子供の遊びを観察してもこの自己決定理論の要素が含まれることがわかる。

どんな遊びをするか、遊びの中でどんな行動をするかを自律的にきめ、その遊びを繰り返すことで少しずつうまくなり有能感を感じる。ある程度年を重ねると一人遊びから周りのみんなと一緒に遊ぶ様になり関係性を構築する。

彼らは親や先生に言われるまでもなく有能性、自律性、関係性の欲求を満たすことの面白さを知っているのだ。

自己決定理論とゲーム

自己決定理論が内発的動機づけにつながるのであればゲームにも応用が効くだろう。ではそれぞれの欲求に対してゲーム内でどのようなことができるかを考えてみる。

有能性とゲーム

プレイヤーの有能性に対する欲求を満たす方法として、フィードバックがある。基本はプレイヤーが何かを達成したときにきちんと褒めてあげる、ということだ。これはスーパーマリオブラザーズのステージクリア時の演出が参考になるだろう。このゲームでステージ1-1をクリアしただけでも、ファンファーレが鳴り、建物に旗が立ち、花火が打ち上がるのだ。プレイヤーがステージをクリアしたことに対して、あなたはこのファンファーレや花火を打ち上げるに値するくらい優秀で価値のあることをやってのけたとプレイヤーに伝える。そうすることでプレイヤーは自分が有能であると感じることができるだろう。

叱るフィードバックも大切だ。プレイヤーがゲーム内で間違った行動をしたときはそれをわかりやすく伝える。なぜ失敗したのかをプレイヤーに伝えることによってプレイヤーは学習し、次は失敗しないように気をつけてプレイする。そうやって何回も失敗したステージをクリアしたときに感じる有能感は、1発クリア時のそれよりもよりひとしおだろう。

自律性とゲーム

プレイヤーの自律性の欲求を満たす方法として、選択肢を作ることがある。選択肢があれば、プレイヤーはそれらの中から自分の好きなものを選んで行うことができる。この選択を行うことでプレイヤーは自分で物事を決めていると感じることができる。しかし、ただ選択肢を増やすことはよくない。むやみに選択肢を増やしてプレイヤーに対する負荷になってしまうからだ(決定麻痺)。

プレイヤーから見てやってみたい行動が3~5個ほどあり、その中から選ぶくらいがちょうど良さそうだと感じる。RPGで例えると経験値上げ、街の探索、次のストーリーへ進む、武器防具を揃える、というやったみたい行動があり、プレイヤーはそこから行動を選択する塩梅だ。

この部分が良くできているゲームは、やはりゼルダの伝説BOTWだろう。できること、やりたいことが沢山あり、プレイヤーはそのどれからでもやってよいのである。

関係性とゲーム

プレイヤーの関係性の欲求を満たす方法としては、他キャラクターとの交流がある。面白いのはこのキャラクターの中身がリアルな人間でなくてもよい、ということだ。仮に相手がNPCだとしてもゲーム内で交流を重ねることによって関係性の欲求を満たすことができるだろう。勇者になって村を救って村民に慕われる、最初は敵対していたライバルと何度も戦うことによって仲間になるなども関連性を満たすための一つの方法だ。

関連性の欲求をうまく刺激しているゲームは風ノ旅ビトが挙げられる。このゲームはわざとコミュニケーションを制限することで、むしろ他人との関係性や交流のあり方を考えさせられる物となっている。

まとめ

自己決定理論に基づいて内発的動機づけにつながる欲求を簡単に紹介した。それぞれの欲求に対してまだ考えられることが多いため、折を見て掘り下げていきたい。

関連

ゲーム作りに使える心理学【上昇選好】 - gametips

ゲーム作りに使える心理学【決定麻痺】 - gametips

参考書籍(Amazon)

ゲーマーズブレイン -UXと神経科学におけるゲームデザインの原則-

 

 

ゲーム作りに使える心理学【光沢感バイアス】

ゲーム作りに使える心理学として光沢感バイアスを紹介する

光沢感バイアス

艶がなく、くすんだ物体よりも光沢感のある物体が好まれる傾向のこと。

なぜ光沢感のあるものが好まれるのか

これは人が生存するための適応だと言われている。人は生存するためには水は不可欠であり、光沢を持つ物体は水源が近くにある目印になり得るからだ。この光沢感に対する反応は子どもたちにより強く見られる。

ゲームにおける光沢感バイアスの活用その1 プレイヤーの誘導に使う

光沢感バイアスが我々の祖先の適法本能から発生したものであるならば、プレイヤーの誘導にもこれが使えるのではないだろうか、ということである。砂漠のマップにオアシスを作成する、密林のマップに光り輝く宝石を置くなどである。このような光沢感に関連するものがマップ上に確認できれば自ずとプレイヤーを誘導することができるだろう。

ゲームにおける光沢感バイアスの活用その2 重要なアイテムは光沢感もたせる

ゲーム内における重要なアイテムに光沢感をもたせてみるのはどうだろうか。光沢はバイアスによる好意とともに高級感ももたらす。アイテムがより価値が高くみえる、という狙いである。

ゲームにおける光沢感バイアスの活用その3 アイコンに光沢感をもたせる

ほぼスマートフォンゲーム専用のノウハウになりそうだが、ゲーム内はともかくアイコンをしっかりとレンダリングした画像で作ってみる。プレイヤーが携帯を取り出して度のゲームをプレイするか迷っているときのひと押しになるかもしれない。

まとめ

光沢感バイアスに関しては適用すればひとまず良くなる、ということはなく適した状況のときに利用すれば+αになり得る程度だと感じた。利用する場所はしっかりと見極めていきたい。

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Design Rule Index 要点で学ぶ、デザインの法則150

 

 

ゲー作りに使える心理学【アンダーマイニング効果】

ゲーム作りに使える心理学としてアンダーマイニング効果を紹介する

動機づけに関連する内容のため、以下を先に読んでいるとわかりやすいだろう

ゲーム作りに使える心理学【外発的動機づけ、内発的動機づけ】 - gametips

アンダーマイニング効果

内発的動機づけに基づいて行っていた行動に対して、報酬を与えると行動に対してのモチベーションが下がる、ということ。Underminingは弱体化させる、台無しにする、の意。

アンダーマイニングの例

身近なアンダーマイニングの例だと、子供に対して勉強したらゲームを買ってあげる、という約束をすることが挙げられる。この場合、子供にとっての勉強はゲームを買ってもらうために仕方がなく行うことになる。その結果、勉強そのものに対しての内発的動機づけが弱くなってしまう、ということだ。

ボランティア活動に対して報酬を払い始める、というのもそうだろう。ボランティア活動は無償の奉仕活動であり、これは内発的動機に基づいて行われる。しかしながら、日頃の活動の感謝や、もっと活動してほしい、という理由から報酬を上げてしまうと。それがお金をもらってやる仕事となってしまい、勉強の時と同様に、内発的動機づけが弱まってしまう。

ただし、行う行動に対して一定の内発的動機づけを持っている場合は、報酬を与えてもアンダーマイニング効果が発生しない、という考えもあるので外部からの報酬が必ず内発的動機づけを弱めるというわけではない。

ちなみに、アンダーマイニング効果を効率的に引き起こす報酬は金銭だそうだ。

ゲームにおけるアンダーマイニングの例

ゲームをプレイするかどうかに関しては、基本的に内発的動機づけになるので話さずに、ゲーム内で行う行動の動機づけに対してアンダーマイニングを絡めてどのような活用ができるかを考えてみる。

動機づけとアンダーマイニングその1 主目的には外部報酬を与えない

ゲームプレイのメインとなる目的に対してアンダーマイニングを引き起こすような報酬を与えないようにする。例えばRPGで世界を救うときに、王様から"世界を救ってくれたらこの王国の半分をやろう"と提案されたらどうだろうか。プレイヤー見返りを求めず世界を助ける勇者から、王国の半分欲しさに旅する俗物になってしまうだろう。ゲームの主たる目的に対しては金銭や土地などの報酬をつけずに、勇者として世界を救う、俺より強いやつに会いに行く、など内発的報酬をベースにしたほうが良いだろう。

ちなみにどうぶつの森は、主目的としてたぬきに対する借金返済が存在するが、これは建前上のものであり、本来の目的は村や島を開拓することである。そのためにこの借金は無期限、無利子でプレイヤーが返済のために急かされないようになっている。

動機づけとアンダーマイニングその2 過度な罰則を与えない

アンダーマイニングは報酬を与えるのと同様に、罰則を与えても動作するだろう。失敗してほしくないから、ちゃんと操作を覚えてほしいからと過度な罰則を与えるのは逆効果である。といっても、そのようなゲームはあまり見ないので気にすることはないかもしれない。ゲームの良いところは何度失敗しても繰り返せるところだ。

まとめ

外部的動機づけはプレイヤーの行動を促すことはできるが、アンダーマイニング効果のようなデメリットも有る。ゲーム内の報酬それぞれに対して、どこが外部的動機づけ、内部的動機づけにつながるのかを考え、適切に配置していきたい。

関連

ゲーム作りに使える心理学【外発的動機づけ、内発的動機づけ】 - gametips

参考書籍(Amazon)

ゲーマーズブレイン -UXと神経科学におけるゲームデザインの原則-

ゲーム作りに使える心理学【外発的動機づけ、内発的動機づけ】

ゲーム作りに使える心理学として外発的動機づけ、内発的動機づけを紹介する

動機づけ

生物に行動を起こさせるための心理的な過程のこと。人間以外の動物にもみることができる。モチベーションとも言う。

外的動機づけ

外的動機づけとは報酬などの外部要因によって動機づけが行われることである。いわゆるアメとムチだ。

例えばお腹が空いたときに食べ物を探すことを考えてみる。この場合は食料が報酬で、食べ物を探すことが動機づけされた行動となる。食べ物を見つけた結果それを食べて満足すれば、我々はそれを学習し、その対価を求める行動の頻度を増やす。これを正の強化という。

外的動機づけには負の強化もある。正の強化が行動の頻度を増やすのであれは、負の強化は行動の頻度を減らすための動機づけである。つまり行動をすると罰が与えられるためにその行動を行わなくなる、ということだ。例えば小さい頃犬に噛まれとても怖い経験をした人は犬に近寄る行動を行わなくなるだろう。

内的動機づけ

内的動機づけとはある行動を行うことそのものが目的の場合の動機づけである。例えば絵を書くのが好きな子供は報酬がなくてもずっと絵を書き続けている。それは絵を書くこと自体が彼らにとって報酬となっているからだ。趣味全般も内発的動機づけと言えるだろう。

人による動機づけの違い

全く同じ行動でも人によってそれが外的動機づけか、それとも内的動機づけがわかれるときがある。車の運転を例に挙げると、映画館に行ったり、買い物をしたりするために運転するのは映画をみる、買い物をする、という報酬のための行動なので外的動機づけとなり、特に用事がなくても車の運転のするような人にとっての運転は内的動機づけだろう。

ゲームと動機づけの関係

ゲームをプレイすることは内発的動機づけといえるだろう。なぜならば一般的なプレイヤーはゲームをすることで報酬をもらうことはないからだ。ちなみにゲームでお金を稼ぐ配信者やプロゲーマーはゲームプレイそれ自体の報酬と活動による知名度、金銭的報酬を得ようとしているので外的、内的両方の動機づけがされている。企業案件などでお金をもらってその時だけゲームをプレイする一部の配信者は外的動機といえる。

ゲームは内的動機づけだと話したが、この動機づけをうまく行うことは難しい、人によってどの要素によって内的動機づけが刺激されるかが変わってくるからだ。ゲームを作るときはプレイヤーがちゃんと内的に動機づけされるかを考える必要がある。

まとめ

ゲームをプレイする上で動機づけはとても重要なことである。そしてゲームは外発的、内発的の動機づけをうまく組み合わせて作っていく必要がある。

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ゲーム作りに使える心理学【非注意性盲目】

ゲーム作りに使える心理学として非注意性盲目を紹介する

非注意性盲目

人はなにかに集中しているときに、明らかに視界に入っている異常な刺激を知覚しそこなうことがあること。

非注意性盲目の実験

まずは以下の動画を見てほしい。白い服を着たチームと黒い服を着たチームがボールをパスしあっているので、白い服を着たチームが何回パスをしたか、を数えてほしい。

この後に動画の解説があるが、できれば解説を見る前に挑戦したほうが良いだろう。この動画が何であるか知っている人はそのまま進んでほしい。

www.youtube.com

以下ネタバレ

あなたは画面中央を横切るゴリラの気ぐるみに気づいただろうか。この動画は非注意性盲目を検証するためのものであり、ボールのパスカウントに集中していた被験者の約半分が気ぐるみに気づけなかったのだ。

人は平常時であれば明らかに見逃すはずのない刺激を、集中しているときには、認知し損なうことがある、ということである。

日常にある非注意性盲目

非注意性盲目は日常生活で常に発生している。考えことをしているときに周りが見えづらくなるのはもちろんだが、気になることや興味を持っていることに対しても見えるものが変わってくる。例えば新しい服を買おうとしているときに他人の服装がよく目に入ることはないだろうか、これは選択的注意といって、大量の情報の中から本人にとって重要だと思われるものに注意力を投下しているからだ。このことから、逆に興味を持っていない項目は、注意力が払われず、結果的に認知できなくなる。同じ場所で同じものを見ていたとしても、見る人によって見えるものが異なってくるのだ。

このことから人の注意力が重視されている広告、安全対策、警備システム業界などではどうやって人に注意を向けてもらえるかが重要になってくる。

ゲームにおける非注意性盲目

非注意性盲目とは厄介な代物だ。なぜならばプレイヤーの注意力を然るべき場所に投下してもらわないと覚えるべきゲーム知識を覚え損なったり、プレイ体験を毀損させたりしまう可能性があるからだ。

ではどのようにこの法則と付き合っていけばよいかを考えていく。

非注意性盲目との付き合い方その1 注意を適切な場所に向けさせる

エフェクトやカメラワーク、振動などのフィードバックでプレイヤーの注意を適切な場所に導く。例えばステージ上に光るものがあったり、ムービーの最後に特定の場所や道がズームされたらそちらに注意が向くだろう。チュートリアルなどプレイヤーに特定の道順を通ってほしい場合は、その道順に沿って注意の種を置くのである。ここで気をつける点は目を引くオブジェクトを複数置かない、ということだ。

目の前の道を進んでほしいのに違う方向に焚き火があったらそっちに行ってしまうかもしれない。村人の話をちゃんと聞いてほしいのに後ろで変な生き物がうねうね動いていたら話の内容が頭に入ってこないかもしれないのだ。

非注意性盲目との付き合い方その2 必要最低限の情報を提示する

チュートリアルでプレイヤーに何かを覚えてほしいときは、その覚える動作を行うことにのみ集中できるような場を整えればよいだろう。例えば攻撃方法をスライドなどで一気に見せていきなり実践をさせてみたり、チュートリアルで完全に対応しないとやられてしまったりするのは良くないだろう。前者ではたくさんある中でどれに注意を払うべきかわからず、後者ではコマンドを覚えることよりも生き残ることに注意を払ってしまうからだ。

覚えてほしい項目のみに関連するUIのみを表示できればなお良いだろう。移動と攻撃を覚えてほしいときに、それらに関係ない必殺技ゲージやアイテムショートカットなどのUIを隠しておくと、より集中してプレイできると考える。

※個人的には死んで覚える系ゲームは好きだが...

非注意性盲目との付き合い方その3 重要な情報はしっかりと主張させる

重要な情報はしっかりと主張するべきだ。例えば大ダメージを受けたときや必殺技ゲージが溜まったとき、敵に見つかったときなどが挙げられる。ゲームをプレイしているときにこのようなゲーム的に重要なイベントが起きたとき、非注意性盲目を突破してユーザーにそれを知らせる必要がある。プレイヤーに自分が置かれている状況をきちんと認識してもらい、そこから選択、行動してもらうことが重要である。

これはメタルギアソリッドが良い例である。あの有名な敵に見つかったときのリアクションである。敵の頭の上に大きなビックリマークが出るとともに、緊急性を感じさせる音がなる。このフィードバックを受けて的に見つかったことを認知しそこねるプレイヤーはそうそういないだろう。このフィードバックによってプレイヤーは自分の状況を適切に認識し行動を起こすことができるのだ。

重要な情報を伝えそこね、プレイヤーによくわからないまま不利益を被ったように感じさせることは避けたい。

まとめ

人は簡単に見落としをするし、払える注意力にも限界がある。

プレイヤーに覚えてほしいこと、注意を払ってほしいことがあるのならば、きちんとお膳立てをすることも考えておくと良い

関連

ゲーム作りにおける好奇心の使い方 - gametips

ゲーム作りと知覚の差異 - gametips

参考書籍(Amazon)

Design Rule Index 要点で学ぶ、デザインの法則150

ゲーム作りにおける好奇心の使い方

今回はゲーム作りにおける好奇心の使い方を考えてみる

好奇心

物事を探求しようとする根源的な心。人だけではなくある程度の知能を持った動物もこれを持っていると言われている。

好奇心と遊び

好奇心と遊びは切っても切り離せない関係である。なぜならば、好奇心が遊びを生み出すからだ。人は正体のわからないものがあったときに、それらを解明しようとする。子供はその傾向が顕著だろう。知らない物事に対して臆することなく近づき、それを解明しようとする姿はさながら小さな冒険者だ。その好奇心を満たすための自発的な作業こそ遊びなのである。

例えば自分がどんなものが作れるか、作れそうかという好奇心があればそれはお絵かきや、粘土細工、レゴブロック遊びになるし、自分の力量が相手と比べてどれくらいの位置にあるか、という好奇心があればそれは鬼ごっこや将棋などの競うゲームになる。

好奇心とゲーム

プレイヤーにゲームを楽しんでプレイしてもらうためにはこの好奇心が欠かせない。なぜなら好奇心のない作業は義務となり、つまらないものになってしまうからだ。その最たる例が仕事だろう。特にマニュアルが整備されている職業の場合、仕事はミスなくマニュアル通りに作業を行うことである。与えられた業務をただこなすだけの作業はつまらないだろう。

しかしながら、反対に仕事が楽しいという人もいる。これはその仕事をする人が好奇心をもっているためだと考えられる。ゲーム作りの話になるが、プランナーがどうやったらプレイヤーの記憶に残るゲームを作ることができるかを、好奇心で疑問に思った場合、それを試行錯誤して作っていく作業は遊びになるのである。

マニュアル系の仕事だとしても、商品をできるだけきれいに、早く陳列するにはどうしたらよいか、一番見栄えのよい盛り付けをするにはどうすればよいかなどを好奇心で考えればそれも遊びとなる。

ゲームは好奇心を持って自発的にやるからこそ遊びになるのだ。

※別に好奇心をもって仕事をすることを推奨しているわけではない

良いゲームは好奇心をうまく埋め込んでいる

良いゲームはこの好奇心の扱い方がうまい。ゼルダの伝説BTOWを例に上げよう。プレイヤーはまず洞窟からプレイをスタートする。洞窟からプレイを始めることで洞窟の外には何があるんだろう、という好奇心を刺激するのだ。そして洞窟から出ると、外の世界を一望することによって世界の広さを認識し、その世界がどのようになっているか知りたいという好奇心をもたせる。一望するムービーカットの最後に神殿跡や老人をアップすることでそちらに好奇心の意識を向かせることを忘れない。最初の4つの祠攻略のときも祠の周りの環境に違いを作ることによって、その周りの世界もそのくらい様々な世界がありそうだと意識させる。他にもコログの実や祠探し、それらの謎解きも好奇心を刺激するだろう。ゲームのそこかしこに好奇心の種がばらまかれており、プレイヤーはどこにいても好奇心を持ってゲームをプレイできるのだ。

好奇心の活用方法その1 ゲーム内に伏線を作る

好奇心を刺激する方法の一つに謎を作る、ということがある。プレイヤーが疑問に思うこと提示し、それに好奇心をもってもらうのだ。例えば、街の人に話しかけたら人によって全く逆のことを話す。道を大きく分ける。遠くに重要オブジェクトを目立つように配置する、伝説の武器の存在を村人がほのめかす、などだ。

好奇心の活法用法その2 フィードバックを散りばめる

プレイヤーが何かしらアクションを起こしたらきちんとフィードバックを起こすようにする。ゲーム内でアクションを起こせば何かしらのフィードバックが返ってくるとわかった場合、プレイヤーは何をしたらどのようなフィードバックが返ってくるかを疑問におもうからだ。ゼルダBOTWの科学エンジンなどはまさにこれだろう、火や風などのエレメントを木や船の帆などのマテリアルに適用すると木が燃えたり、船が進んだりする。これを見たプレイヤーは、他の組み合わせだったらどうかを試したくなってくるのだ。

好奇心の活法方法その3 ゲーム開発チームの座組をアピールする

ゲーム外の話になってしまうが、開発メンバーに有名開発者や絵師、声優を起用するのも好奇心の活用だろう。その人が関わっているから、あの開発会社の新作だからと興味を持ってくれるプレイヤーは一定数いる。

まとめ

プレイヤーに楽しんでゲームをプレイしてもらうためには好奇心が重要である。好奇心のないゲームはただのつまらない作業となる。

余談だが、私がSEKIROをプレイしたときにどうしたらこの敵を倒せるか、ストーリーの最後はどうなるかの好奇心でゲームを楽しんでいたが、トロコンを目標に経験値を集め始めた瞬間にそれはただの作業となった。

※トロコンしたら限定武器がもらえるとか、特別ムービーを見ることができるなどの仕様があったら、また違っていたかもしれない

関連

ゲーム作りにおける驚きの感情の使い方 - gametips

ゲーム作りに使える心理学【ツァイガルニク効果】 - gametips

参考リンク

好奇心 - Wikipedia

Alfa・MARS PROJECT COLUMN リアルな、町の人の台詞の書き方

「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」が実現した“かけ算の遊び” - GAME Watch

参考書籍(Amazon)

ゲームデザインバイブル 第2版 ―おもしろさを飛躍的に向上させる113の「レンズ」

 

ゲームづくりに使える心理学【保有効果】

ゲームづくりに使える心理学として保有効果を紹介する

保有効果

人は所持しているものに対して高い価値を感じ、それを手放すことに対して抵抗感をもつ、ということ。

ダニエル・カーネマンの実験

行動経済学者であるダニエル・カーネマンはこの保有効果をマグカップの実験により検証した。まず学生を集め彼らの半分に$6相当のマグカップを与える、そしてマグカップをもらった学生にそのマグカップをいくらなら手放すか、マグカップをもらわなかった学生にはそのマグカップを手に入れるのにいくら払うか、を聞いた。その結果、マグカップ保有している学生が売っても良いと考えた金額は、中央値で$5.3、マグカップ保有していない学生が買っても良いと考えた金額は、中央値で$2.5だった。自分が所持しているかどうかで、考える価値に2倍以上の差が出たのだ。

日常における保有効果

自分自身が持つ保有効果は持ち物を売るときなどに感じることができるだろう。例えば家や車を売るときを考える。それらには思い出がたくさん詰まっており、自分で言うのもなんだが大切に扱ってきたつもりだ。しかし実際に売りに出してみると思ったより値段がつかない。自分には思い出がたくさん詰まっているものでも買い手にとってはただの中古の物件、車となるからだ。

ゲームにおける保有効果

ゲームに関してはプレイヤーのゲーム内資産がそのまま保有効果の対象となるだろう。特にソーシャルゲームにはレアカード、プレイヤーデータ、ギルド、フレンドなど様々なゲーム資産があるため、プレイヤーは保有効果を感じやすい。今まで積み上げてきたゲーム資産があるからこそ、そのゲームはそのプレイヤーにとって価値があるものとなり、更にプレイして資産を増やしていくのだ。

保有効果の活用その1 プレイヤー資産を可視化する

プレイヤーに保有効果を感じてもらうために、具体的にどのような資産を持っているのかを可視化する。単純なキャラクターのパラメータからゲームプレイ時間などゲームプレイに直接関係なものでもよい。プレイヤーがどれだけこのゲームに時間を費やし、どれだけの資産があるかを示すことが大事だ。

保有効果の活用その2 序盤に資産となるものを与える

ゲーム序盤にゲーム内資産となるものをプレゼントする。最初から失ってしまう資産があるようにしてしまうのだ。具体的にはまとまったゲーム内マネーを与えたり、連続ガチャチケットを与える。プレイヤーはせっかくもらったんだしちょっとやってみるかな、という感覚でゲームをプレイする。最近のソーシャルゲームは予約者数特典がこのような役割を果たしているだろう。

保有効果の活用その3 名前をつけてもらう

ゲームでは結構お決まりの仕様ではあるが、主人公やお連れのキャラクターの名前を プレイヤーに決めてもらうのである。文字入力が面倒になりそうならば、選択肢から選ぶだけでも効果があるだろう。名付けはまさに保有のための儀式であり、保有している感覚を強化することができる。

まとめ

保有効果によりプレイヤーに継続してプレイしてもらうためのヒントを考えてみた。しかしながら、これはあくまでテクニックの一つである。ゲームのコア体験をしっかりとプレイヤーに提供することのほうが重要であることを忘れてはならない。

関連

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参考 

実験室実験

参考書籍(Amazon)

世界最前線の研究でわかる! スゴい! 行動経済学