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ゲーム作りに関するあれこれ

ゲーム作りに使える心理学【非注意性盲目】

ゲーム作りに使える心理学として非注意性盲目を紹介する

非注意性盲目

人はなにかに集中しているときに、明らかに視界に入っている異常な刺激を知覚しそこなうことがあること。

非注意性盲目の実験

まずは以下の動画を見てほしい。白い服を着たチームと黒い服を着たチームがボールをパスしあっているので、白い服を着たチームが何回パスをしたか、を数えてほしい。

この後に動画の解説があるが、できれば解説を見る前に挑戦したほうが良いだろう。この動画が何であるか知っている人はそのまま進んでほしい。

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以下ネタバレ

あなたは画面中央を横切るゴリラの気ぐるみに気づいただろうか。この動画は非注意性盲目を検証するためのものであり、ボールのパスカウントに集中していた被験者の約半分が気ぐるみに気づけなかったのだ。

人は平常時であれば明らかに見逃すはずのない刺激を、集中しているときには、認知し損なうことがある、ということである。

日常にある非注意性盲目

非注意性盲目は日常生活で常に発生している。考えことをしているときに周りが見えづらくなるのはもちろんだが、気になることや興味を持っていることに対しても見えるものが変わってくる。例えば新しい服を買おうとしているときに他人の服装がよく目に入ることはないだろうか、これは選択的注意といって、大量の情報の中から本人にとって重要だと思われるものに注意力を投下しているからだ。このことから、逆に興味を持っていない項目は、注意力が払われず、結果的に認知できなくなる。同じ場所で同じものを見ていたとしても、見る人によって見えるものが異なってくるのだ。

このことから人の注意力が重視されている広告、安全対策、警備システム業界などではどうやって人に注意を向けてもらえるかが重要になってくる。

ゲームにおける非注意性盲目

非注意性盲目とは厄介な代物だ。なぜならばプレイヤーの注意力を然るべき場所に投下してもらわないと覚えるべきゲーム知識を覚え損なったり、プレイ体験を毀損させたりしまう可能性があるからだ。

ではどのようにこの法則と付き合っていけばよいかを考えていく。

非注意性盲目との付き合い方その1 注意を適切な場所に向けさせる

エフェクトやカメラワーク、振動などのフィードバックでプレイヤーの注意を適切な場所に導く。例えばステージ上に光るものがあったり、ムービーの最後に特定の場所や道がズームされたらそちらに注意が向くだろう。チュートリアルなどプレイヤーに特定の道順を通ってほしい場合は、その道順に沿って注意の種を置くのである。ここで気をつける点は目を引くオブジェクトを複数置かない、ということだ。

目の前の道を進んでほしいのに違う方向に焚き火があったらそっちに行ってしまうかもしれない。村人の話をちゃんと聞いてほしいのに後ろで変な生き物がうねうね動いていたら話の内容が頭に入ってこないかもしれないのだ。

非注意性盲目との付き合い方その2 必要最低限の情報を提示する

チュートリアルでプレイヤーに何かを覚えてほしいときは、その覚える動作を行うことにのみ集中できるような場を整えればよいだろう。例えば攻撃方法をスライドなどで一気に見せていきなり実践をさせてみたり、チュートリアルで完全に対応しないとやられてしまったりするのは良くないだろう。前者ではたくさんある中でどれに注意を払うべきかわからず、後者ではコマンドを覚えることよりも生き残ることに注意を払ってしまうからだ。

覚えてほしい項目のみに関連するUIのみを表示できればなお良いだろう。移動と攻撃を覚えてほしいときに、それらに関係ない必殺技ゲージやアイテムショートカットなどのUIを隠しておくと、より集中してプレイできると考える。

※個人的には死んで覚える系ゲームは好きだが...

非注意性盲目との付き合い方その3 重要な情報はしっかりと主張させる

重要な情報はしっかりと主張するべきだ。例えば大ダメージを受けたときや必殺技ゲージが溜まったとき、敵に見つかったときなどが挙げられる。ゲームをプレイしているときにこのようなゲーム的に重要なイベントが起きたとき、非注意性盲目を突破してユーザーにそれを知らせる必要がある。プレイヤーに自分が置かれている状況をきちんと認識してもらい、そこから選択、行動してもらうことが重要である。

これはメタルギアソリッドが良い例である。あの有名な敵に見つかったときのリアクションである。敵の頭の上に大きなビックリマークが出るとともに、緊急性を感じさせる音がなる。このフィードバックを受けて的に見つかったことを認知しそこねるプレイヤーはそうそういないだろう。このフィードバックによってプレイヤーは自分の状況を適切に認識し行動を起こすことができるのだ。

重要な情報を伝えそこね、プレイヤーによくわからないまま不利益を被ったように感じさせることは避けたい。

まとめ

人は簡単に見落としをするし、払える注意力にも限界がある。

プレイヤーに覚えてほしいこと、注意を払ってほしいことがあるのならば、きちんとお膳立てをすることも考えておくと良い

関連

ゲーム作りにおける好奇心の使い方 - gametips

ゲーム作りと知覚の差異 - gametips

参考書籍(Amazon)

Design Rule Index 要点で学ぶ、デザインの法則150

ゲーム作りにおける好奇心の使い方

今回はゲーム作りにおける好奇心の使い方を考えてみる

好奇心

物事を探求しようとする根源的な心。人だけではなくある程度の知能を持った動物もこれを持っていると言われている。

好奇心と遊び

好奇心と遊びは切っても切り離せない関係である。なぜならば、好奇心が遊びを生み出すからだ。人は正体のわからないものがあったときに、それらを解明しようとする。子供はその傾向が顕著だろう。知らない物事に対して臆することなく近づき、それを解明しようとする姿はさながら小さな冒険者だ。その好奇心を満たすための自発的な作業こそ遊びなのである。

例えば自分がどんなものが作れるか、作れそうかという好奇心があればそれはお絵かきや、粘土細工、レゴブロック遊びになるし、自分の力量が相手と比べてどれくらいの位置にあるか、という好奇心があればそれは鬼ごっこや将棋などの競うゲームになる。

好奇心とゲーム

プレイヤーにゲームを楽しんでプレイしてもらうためにはこの好奇心が欠かせない。なぜなら好奇心のない作業は義務となり、つまらないものになってしまうからだ。その最たる例が仕事だろう。特にマニュアルが整備されている職業の場合、仕事はミスなくマニュアル通りに作業を行うことである。与えられた業務をただこなすだけの作業はつまらないだろう。

しかしながら、反対に仕事が楽しいという人もいる。これはその仕事をする人が好奇心をもっているためだと考えられる。ゲーム作りの話になるが、プランナーがどうやったらプレイヤーの記憶に残るゲームを作ることができるかを、好奇心で疑問に思った場合、それを試行錯誤して作っていく作業は遊びになるのである。

マニュアル系の仕事だとしても、商品をできるだけきれいに、早く陳列するにはどうしたらよいか、一番見栄えのよい盛り付けをするにはどうすればよいかなどを好奇心で考えればそれも遊びとなる。

ゲームは好奇心を持って自発的にやるからこそ遊びになるのだ。

※別に好奇心をもって仕事をすることを推奨しているわけではない

良いゲームは好奇心をうまく埋め込んでいる

良いゲームはこの好奇心の扱い方がうまい。ゼルダの伝説BTOWを例に上げよう。プレイヤーはまず洞窟からプレイをスタートする。洞窟からプレイを始めることで洞窟の外には何があるんだろう、という好奇心を刺激するのだ。そして洞窟から出ると、外の世界を一望することによって世界の広さを認識し、その世界がどのようになっているか知りたいという好奇心をもたせる。一望するムービーカットの最後に神殿跡や老人をアップすることでそちらに好奇心の意識を向かせることを忘れない。最初の4つの祠攻略のときも祠の周りの環境に違いを作ることによって、その周りの世界もそのくらい様々な世界がありそうだと意識させる。他にもコログの実や祠探し、それらの謎解きも好奇心を刺激するだろう。ゲームのそこかしこに好奇心の種がばらまかれており、プレイヤーはどこにいても好奇心を持ってゲームをプレイできるのだ。

好奇心の活用方法その1 ゲーム内に伏線を作る

好奇心を刺激する方法の一つに謎を作る、ということがある。プレイヤーが疑問に思うこと提示し、それに好奇心をもってもらうのだ。例えば、街の人に話しかけたら人によって全く逆のことを話す。道を大きく分ける。遠くに重要オブジェクトを目立つように配置する、伝説の武器の存在を村人がほのめかす、などだ。

好奇心の活法用法その2 フィードバックを散りばめる

プレイヤーが何かしらアクションを起こしたらきちんとフィードバックを起こすようにする。ゲーム内でアクションを起こせば何かしらのフィードバックが返ってくるとわかった場合、プレイヤーは何をしたらどのようなフィードバックが返ってくるかを疑問におもうからだ。ゼルダBOTWの科学エンジンなどはまさにこれだろう、火や風などのエレメントを木や船の帆などのマテリアルに適用すると木が燃えたり、船が進んだりする。これを見たプレイヤーは、他の組み合わせだったらどうかを試したくなってくるのだ。

好奇心の活法方法その3 ゲーム開発チームの座組をアピールする

ゲーム外の話になってしまうが、開発メンバーに有名開発者や絵師、声優を起用するのも好奇心の活用だろう。その人が関わっているから、あの開発会社の新作だからと興味を持ってくれるプレイヤーは一定数いる。

まとめ

プレイヤーに楽しんでゲームをプレイしてもらうためには好奇心が重要である。好奇心のないゲームはただのつまらない作業となる。

余談だが、私がSEKIROをプレイしたときにどうしたらこの敵を倒せるか、ストーリーの最後はどうなるかの好奇心でゲームを楽しんでいたが、トロコンを目標に経験値を集め始めた瞬間にそれはただの作業となった。

※トロコンしたら限定武器がもらえるとか、特別ムービーを見ることができるなどの仕様があったら、また違っていたかもしれない

関連

ゲーム作りにおける驚きの感情の使い方 - gametips

ゲーム作りに使える心理学【ツァイガルニク効果】 - gametips

参考リンク

好奇心 - Wikipedia

Alfa・MARS PROJECT COLUMN リアルな、町の人の台詞の書き方

「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」が実現した“かけ算の遊び” - GAME Watch

参考書籍(Amazon)

ゲームデザインバイブル 第2版 ―おもしろさを飛躍的に向上させる113の「レンズ」

 

ゲームづくりに使える心理学【保有効果】

ゲームづくりに使える心理学として保有効果を紹介する

保有効果

人は所持しているものに対して高い価値を感じ、それを手放すことに対して抵抗感をもつ、ということ。

ダニエル・カーネマンの実験

行動経済学者であるダニエル・カーネマンはこの保有効果をマグカップの実験により検証した。まず学生を集め彼らの半分に$6相当のマグカップを与える、そしてマグカップをもらった学生にそのマグカップをいくらなら手放すか、マグカップをもらわなかった学生にはそのマグカップを手に入れるのにいくら払うか、を聞いた。その結果、マグカップ保有している学生が売っても良いと考えた金額は、中央値で$5.3、マグカップ保有していない学生が買っても良いと考えた金額は、中央値で$2.5だった。自分が所持しているかどうかで、考える価値に2倍以上の差が出たのだ。

日常における保有効果

自分自身が持つ保有効果は持ち物を売るときなどに感じることができるだろう。例えば家や車を売るときを考える。それらには思い出がたくさん詰まっており、自分で言うのもなんだが大切に扱ってきたつもりだ。しかし実際に売りに出してみると思ったより値段がつかない。自分には思い出がたくさん詰まっているものでも買い手にとってはただの中古の物件、車となるからだ。

ゲームにおける保有効果

ゲームに関してはプレイヤーのゲーム内資産がそのまま保有効果の対象となるだろう。特にソーシャルゲームにはレアカード、プレイヤーデータ、ギルド、フレンドなど様々なゲーム資産があるため、プレイヤーは保有効果を感じやすい。今まで積み上げてきたゲーム資産があるからこそ、そのゲームはそのプレイヤーにとって価値があるものとなり、更にプレイして資産を増やしていくのだ。

保有効果の活用その1 プレイヤー資産を可視化する

プレイヤーに保有効果を感じてもらうために、具体的にどのような資産を持っているのかを可視化する。単純なキャラクターのパラメータからゲームプレイ時間などゲームプレイに直接関係なものでもよい。プレイヤーがどれだけこのゲームに時間を費やし、どれだけの資産があるかを示すことが大事だ。

保有効果の活用その2 序盤に資産となるものを与える

ゲーム序盤にゲーム内資産となるものをプレゼントする。最初から失ってしまう資産があるようにしてしまうのだ。具体的にはまとまったゲーム内マネーを与えたり、連続ガチャチケットを与える。プレイヤーはせっかくもらったんだしちょっとやってみるかな、という感覚でゲームをプレイする。最近のソーシャルゲームは予約者数特典がこのような役割を果たしているだろう。

保有効果の活用その3 名前をつけてもらう

ゲームでは結構お決まりの仕様ではあるが、主人公やお連れのキャラクターの名前を プレイヤーに決めてもらうのである。文字入力が面倒になりそうならば、選択肢から選ぶだけでも効果があるだろう。名付けはまさに保有のための儀式であり、保有している感覚を強化することができる。

まとめ

保有効果によりプレイヤーに継続してプレイしてもらうためのヒントを考えてみた。しかしながら、これはあくまでテクニックの一つである。ゲームのコア体験をしっかりとプレイヤーに提供することのほうが重要であることを忘れてはならない。

関連

ゲーム作りに使える心理学【上昇選好】 - gametips

ゲーム作りに使える心理学【損失回避】 - gametips

参考 

実験室実験

参考書籍(Amazon)

世界最前線の研究でわかる! スゴい! 行動経済学

ゲーム作りに使える心理学【ツァイガルニク効果】

今回はゲーム作りに使える心理学としてツァイガルニク効果を紹介する

ツァイガルニク効果

 人は達成できなかったことや中断している事柄の方を、達成した項目よりもよく覚えている、ということ。ソビエト精神科医兼心理学者であるブルーマ・ツァイガルニクが明らかにした。

日常にあるツァイガルニク効果

誰かが何かを話しかけたのち、いやなんでもない、と話を切り上げてしまった時にその話の続きが気になってしまった事はないだろうか。もしくは、ドラマを見ている時に、いよいよクライマックス、というところで放送が終わってしまったときもそうだろう。このように物事が中断されてしまったときに、つい気にしてしまうことがツァイガルニク効果である。

この効果はマーケティングでもよく利用されている、たとえばテレビCMでストーリーを展開し、わざと打ち切る。そして"続きはWebへ"という感じにプロモーションサイトへ誘導するのだ。

ゲームにおけるツァイガルニク効果

ではゲームにおいてこの効果がどのように活用できるか考えてみる。この効果はゲーム体験そのものの構築や、プレイヤーが継続してくれるような仕組みづくりなどに役立つだろう。

ツァイガルニク効果の活用その1 物事の閉合そのものをゲーム体験とする

物事が中途半端になっていることが気になってしまう、ということはその物事を完成させることにモチベーションがある、と取ることもできる。この物事を完成させる体験をゲームのコア体験としてしまおう、ということだ。この体験はパズル系のものと相性がよいだろう。不完全な状態にあるパズルをプレイヤー自身の手で完成までもっていくわけだ。ハイパーカジュアル系のゲームにもこのタイプがあるのでいくつか紹介する。

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ツァイガルニク効果の活用その2 ゲーム内に伏線を作る

ゲーム内に伏線を作っておき、それをゲームの進行とともに紐解いていく。プレイヤーは伏線の内容を知りたいモチベーションでゲームをプレイし、結果を知ることで満足する(もちろん内容の善し悪しもあるが)。

Horizon Zero Dawnが良い例だろう。これは動物の姿を模した機械に支配された世界の話で、主人公は自分の出自とこの世界の謎を解くために冒険に出かける。始めに大きな謎をもってくることで、それを解きほぐすことをプレイのモチベーションの一つとする。

ちなみに伏線はこれほど大規模なものでなくて良い。例えば、RPGである村に入ったら村人が全員無口だった、などでもよい。プレイヤーが気になり、答えを知りたいと思ってもらえばよいのだ。

ツァイガルニク効果の活用その3 やるべきタスクを尽きさせない

ゲーム中に様々なタスクを作成して、それらを並列に取り掛かることができるようにする。プレイヤーがあるタスクを行ったら、他のタスクが途中まで進み、もうすこしでそれがクリアできるようになる。そのタスクをクリアしたらまた別のタスクが待っているという塩梅だ。重要なのは並列であることだ。一つのタスクが終わったら次のタスクがはじまるという仕様では、タスクが終わったときの満足感と、次のタスクを始めるまでの開始コストが合わさってしまい、プレイのブレークポイントとなってしまう。

ただし、多くのタスクをプレイヤーに課しておくのも良くないだろう。やるべきことが多いとプレイヤーが決定麻痺を起こしてしまい、タスクの着手に影響がでるためである。

ツァイガルニク効果の活用その4 キャラクターの成長パラメータに波をつける

一般的なRPGはレベルが上がれば各種パラメータが一度に上がるが、それだとプレイヤーは次のレベルアップまでコツコツと経験値を貯めなくてはいけなくなる。次のレベルアップまでの必要経験値が膨大であればその目標の遠さにモチベーションも下がってしまうだろう。

そこでキャラクターの主要パラメータごとにレベルアップの方式を変更するのだ。例えば特別なアイテムを4つで体力最大値アップ、経験値で基本能力アップ、スキルポイントでスキル獲得、などである。こうすれば、1つのパラメータをレベルアップしたら他のパラメータのレベルアップ進捗が途中になり、次はそちらを上げたくなる欲求に駆られる。

ゼルダの伝説Botwはこの成長の波の組み合わせがうまい。特殊アイテムとして克服の証とコログの実があり、それらを複数集めることでパラメータを強化できる。これにストーリーや装備の波が相まって常に何かしらが中途半端な状態になるのだ。

まとめ

プレイヤーに継続プレイのモチベーションをもってもらうために、このこの心理効果を活用することができるだろう。ただし、この効果はプレイヤーが対象となるタスクに対して一定の達成動機を持っていることが前提である。このテクニックを適用するタスクはきちんと吟味することが必要だろう。

関連

ゲーム作りに使える心理学【決定麻痺】 - gametips

参考

ツァイガルニク効果 - Wikipedia

参考書籍(Amazonリンク)

Design Rule Index 要点で学ぶ、デザインの法則150

 

ゲーム作りに使えるUIデザイン【フィッツの法則】

今回はゲーム作りに使えるUIデザインとしてフィッツの法則を紹介する

フィッツの法則

目標物に移動する時の時間は対象物への距離とその大きさとの相関関係で決まる、ということ。具体的には対象物への距離が短いほど、対象物が大きいほどその時間は短くなる。アメリカの心理学者であるポール・フィッツが提唱したことからその名前が付けられている。

フィッツの法則とUX

フィッツの法則はUIの扱いやすさを測る一つの尺度として利用できる。この法則が説明している目標物に移動する時の時間はそのままUIの扱いやすさとなるからだ。これはボタンを例にするとわかりやすい。モニター上にボタンがあり、それをマウスでクリックする作業を行うとする。そのボタンは大きければ大きいほど、かつ近ければ近いほど押しやすくなる。

また、カーソルが画面の端に行ったらそれ以上進まないようにすることで、実質的にサイズが無限大のボタンを作成する事ができる。画面の上部に固定されているボタンを押下するためにカーソルを上に移動し枠まで到達すれば、そこでカーソルの移動が止まるため、ボタンを通り過ぎる事はない。WindowsMacのOSはこの無限大サイズのボタンにスタートメニューやホットコーナーなどの重要なメニューを配置しておき、ユーザーが簡単にそのUIにアクセスできるようにしている。

フィッツの法則の活用その1 UIは大きく

やはりUIは大きい方が良いだろう。特にスマートフォンゲームなどの画面を直接タップする場合は、指が太い人、細かい操作が苦手な人でも簡単にタップできるようにしたい。

フィッツの法則の活用その2 利用頻度によってUIのサイズをかえる

UIは大きい方が操作しやすいが、全てのUIを大きくしたら画面が埋まってしまう。よってよく利用するボタンなどは大きく、そうでないボタンは小さくする。例えばバトルに出撃するボタンは大きく、設定ボタンは小さく、という事だ。

とあるステージ制のパズルアプリの話だが、ステージクリア後にリトライ、次のステージ、メニューへ戻るの三つのボタンが全て同じサイズで表示されているものがあった。プレイヤーはステージをクリアすると基本的に次のステージに進むものなので、この場合は次のステージボタンを大きく、それ以外のボタンを小さくすると良いだろう。

フィッツの法則の活用その3 プレイヤーの指/カーソルの導線を考える

特にスマートフォン系のタッチするゲームに関連するものだが。UIを配置する時にプレイヤーの指の導線を考えると良いだろう。ゲーム内の主なUI操作をほとんど指を動かさないようにできるれば良い。例えばゲームクリア後のステータス確認画面から、報酬受け取り、メニューに戻るところまで同じ場所をタップしていれば良い、という塩梅だ。

スマートフォンゲームではパソコンのブラウザよろしく左上に戻るボタンや閉じるボタンを配置しているものが多いが、これはフィッツの法則から見るとあまり良くない。ゲームが縦持ちの場合、毎回戻るたびに画面上部まで指を持っていきボタンを押す必要があるからだ。そのボタンが小さいものだったら余計手に間となる。手の小さい子供や女性でも楽にUIを操作できるように心がけたい。

フィッツの法則の活用その4 押して欲しいボタンを大きくする

どうやら人はボタンを押したがる生き物で、そこに押しやすそうなボタンがあれば押してしまうらしい(行動喚起)。バスやエレベータ、横断歩道のボタンを押したがる子供がいることからもわかるだろう。そこで、フィッツの法則を利用して押して欲しい機能を押しやすいように配置するのである。

これはハイパーカジュアル系のゲームがよくやる手法である。ゲームクリア後に動画広告を見てクリア報酬を上乗せするボタンを大きく、鮮やかな色で表示するのだ。しかもプレイヤーの指がちょうどありそうな場所に。プレイヤーは今までの入力のノリでそのままボタンを押してしまう。

ただし、この場合はフィッツの法則とプレイヤーの心理を利用した引っかけのようなもののため、あまり褒められたものではない。

フィッツの法則の活用その5 押した場所にUIを表示する

UIまでの距離が短ければ短いほど簡単にアクセスできるのであれば、押した場所にUIを表示してしまおう、ということである。例としてはキャラクターを動かす時のバーチャルジョイパッドがある。画面を押下した場所がジョイパッドの中心となり、そこから指を移動させることで任意の方向にキャラクターを移動させる事ができる。他にも特定の選択肢の中から1つを選択する場合などでも活用できるだろう。

まとめ

フィッツの法則はプレイヤーにとって使いやすいUIを作る方針として利用できる。

UIはあくまでプレイヤーがやりたいことを行うためにあるものであり、適当に配置したりデザイン優先で操作性を損なったりする事は避けたい。

参考

フィッツの法則 - Wikipedia

参考書籍(Amazonリンク)

Design Rule Index 要点で学ぶ、デザインの法則150

 

ゲーム作りにおけるロード画面の活用方法

ゲーム作りでロード画面をどのように活用できるかを考えてみる

ロード画面

ゲームを始めるための準備を行う時にプレイヤーに見せておく一時的な画面のこと。モデルやテクスチャのロードや通信などを行っている。

ロード画面の活用

ロード画面は基本的にシンプルなものが多い。なぜなら、裏で重い処理を行っている事が多く、ロード画面そのものに計算資源を利用すると、ロード完了までの時間が伸びてしまう事があるからだ。よく見るフォーマットは、画面右端に動くアイコンのようなものをおくだけのものだろう。ただ、このようなロード画面はとても退屈で、プレイヤーにとってはよくない体験となる。

ではこのロード画面を活用してプレイヤーに良い体験を提供できないかを考えてみる。

ロード画面活用方法その1 パラメータ表示

プレイ中のキャラクターのパラメータを表示する。例えばプレイヤーのヒットポイントの最大値やクリアしたダンジョンの数、収集系のアイテムの取得総数である。倒した中ボスのアイコンなどでも大丈夫だ。これを表示する事でプレイヤーはロードを挟むたびに自分がどれだけ成長しているかを数値やアイコンの数で感じ取る事ができる。

これらのパラメータは討伐累計数や移動距離など、積み上がって上昇していく値が良いだろう。パラメータ毎で全ユーザーのうち上位何%にいるか、を表示するのも面白いかもしれない。

この仕様はゼルダの伝説btowでみる事ができる。

ロード画面活用方法その2 設定資料表示

ゲーム制作時に利用した設定資料などの画像をロード画面で表示する。例えば、アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージでは短いロード時にアイドルたちの一コマ漫画を表示している。これはロード時間の体感短縮に加え、アイドルたちをよく知り、よりゲームを楽しむために役立つだろう。また、推しアイドルが表示された時の喜びもありそうだ。あたかもロード画面を活用したガチャのようなものである。

付け加えるが、設定資料などを表示する場合、まだ出てきていないキャラクター、ステージなどは出さないようにする必要があるだろう。壮大なネタバレになる可能性がある。

ロード画面活用方法その3 リマインダー表示

他の記事でも何度か触れているが、ロード画面にゲームのプレイ方法のTipsを挟む方法がある。詳しくは記事に書いてあるが、基本的な目的はプレイヤーに対する負荷削減である。

ゲーム作りに使える心理学【忘却曲線】 - gametips

ゲーム作りにおいて、序盤でプレイヤーにかかる認知負荷を減らす方法を考える - gametips 

ロード画面活用方法その4 インタラクティブなものを表示

プレイヤーが暇つぶしできるようにプレイヤーの入力に対して何かしらの反応をするインタラクティブなものを表示する。例えばキャラクターがジャンプするだけのものでも良いし、タップしたところにエフェクトが出るだけでも良い。

ミニゲームをいれる、という方法もあるだろう。ゲームのキャラクターをモチーフにした簡単なミニゲームをいれる。そこで手に入れたスコアが微々たるものでもゲームに反映させるのも面白いだろう。ロード中のミニゲームナムコが特許を持っていたが現在は失効している。

まとめ

ロード画面を活用する方法をいくつか紹介した。

どの方法を採用するかは、元々のゲームのコア体験をどのロード画面が最も強化できるか、を考えると良いだろう。アイドルマスターのようなキャラクターがたくさんいるゲームであれば設定資料、覚える事がたくさんある戦略系ゲームであれば、リマインダー、簡単操作のアクションゲームであればインタラクティブなもの、という塩梅である。

主役はゲームがプレイヤーに提供する体験であり、ロード画面はあくまで脇役であることを忘れてはならない。

参考

ロード画面 - Wikipedia

関連

ゲーム作りに使える心理学【忘却曲線】 - gametips

ゲーム作りにおいて、序盤でプレイヤーにかかる認知負荷を減らす方法を考える - gametips

 

ゲーム作りに使える心理学【忘却曲線】

ゲーム作りに使える心理学として忘却曲線を紹介する

 

忘却曲線

人が覚えた事柄に対する経過時間ごとの忘却率をグラフで表したもの。特に心理学者のエビングハウスによるものが有名である。

エビングハウスの実験

エビングハウスは自分を実験台として以下の実験を行った。それは、無意味な文字列を記憶し、一定時間ごとにどの程度思い出せるかを測定する事である。実験の結果、記憶を行った20分後には内容の40%を忘れ、さらに翌日になると70%近くも忘れていた事がわかった。

人は物事を忘れる

エビングハウスの実験は無意味な文字列の記憶のため、あくまで参考値であるが、人がどれだけ物事を忘れやすいかがわかるだろう。人の脳はずいぶん省エネにできており、必要のないと判断された情報はどんどん忘れていく。なかなか信用の置けないやつなのだ。

ゲームにおける弊害

久しぶりにゲームソフトを起動して、"あれ、次何やろうとしてたんだっけ"、とゲーム内でやろうとしていたことを忘れていた体験はないだろうか。そして街中を散策したり、キャラクターのパラメータを確認したりして、ようやく思い出す。ゲームの操作方法や細かい仕様などを忘れていることもあるだろう。プレイヤーはそれらの失われた記憶を取り戻し、昔のようにプレイを楽しむために労力を払わないといけない。面倒くさがってまたやらなくなってしまうかもしれない。

期間が空いた時にゲームに関する内容を忘れてしまうのはどうしようもない。しかし、ゲーム内でサポートできることもあるだろう。

忘却対策 その1 必要な項目は常に表示されるようにしておく

例えばプレイヤーがアイテムを拾う時に○ボタンを押す必要があれば、アイテムに近づいたらそのアイテムの近くに○ボタンのアイコンを表示する、ということである。必要になった時に必要な情報を提示すればプレイヤーはひとまず目的を達成できる。そしてそれを繰り返していくうちにアイコンを見なくても操作できるようになる。

忘却対策 その2 おさらいをする

ゲームの途中でおさらいを入れるのも良いだろう。例えば新しい章が始まる時に今までのプレイしたストーリーを軽くおさらいするのである。プレイヤーが章の終わりなど、区切りの良いところでゲームを中断していれば、再開した時にストーリーのおさらいができ、思い出す手間が軽くなる。

このシステムは龍が如く0に導入されている。このゲームは章ごとに主人公が入れ替わる構成になっているため、ある主人公の章をクリアしたら、別な主人公の章が始まることがある。主人公の切り替え時に毎回ストーリーを思い出す事が手間となるが、このゲームはおさらいムービーを主人公切り替えのタイミングで挟むことにより、プレイヤーに対する負荷を軽減させている。

忘却対策 その3 リマインダーを出す

ロード画面などでリマインダーを出すのも有効だろう。その内容を覚えていれば記憶が強化され、忘れていれば思い出してもらえる事ができる。ここに表示するのは別に機能の説明以外でも良いだろう。おすすめの戦闘方法や、キャラクターの人物像などを書いてもゲームをより深く楽しんでらえる機会になる。

忘却対策 その4 情報に優先順位をつける

プレイヤーに覚えて欲しい情報に優先順位をつけ、それを重点的にプレイヤーに提示する。細かい情報は最悪忘れてしまっても良いと割り切り、ゲームの面白さを体験するためのコアとなる情報を絶対に忘れない、忘れてもすぐ思い出せるようにするのだ。

まとめ

開発者がどんなに努力してもプレイヤーはゲームに関する物事を忘れてしまう。

プレイヤーを情報面できちんとサポートし、ゲーム内の体験に集中してもらえるようにしていきたい。

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ゲーム作りにおいて、序盤でプレイヤーにかかる認知負荷を減らす方法を考える - gametips

参考

忘却曲線 - Wikipedia